2006年6月4日
イタリア ジプシースウィング スティール弦ギター フラットピッキング
時は21世紀、Django Reinhardt の没後50年もとうに越え、マヌーシュ・スウィングの流れは絶えるどころか世代や国境を越えてますます広がりつつある。さて、ヨーロッパ諸国の中でひときわ音楽の盛んな国でありながら、マヌーシュ・スウィング的には穴場の様に感じるイタリアだが、なかなかどうしてここにも素晴らしいギタリストが居る。'90年代から自らのグループを率いて活躍中の Maurizio Geri は、Django のスピリッツを受け継ぎながらも洗練された洒脱さと華やかさが魅力の、実力派ギタリストだ。同じくイタリアのアコースティックギタリスト Beppe Gambetta とのデュオ活動も平行して行っているようで、Beppe がブルーグラス系統という異ジャンルなだけに、こちらも興味深い。
'01年発表、Maurizio Geri Swingtet 名義の5thアルバム。このユニットは、Hot Club 五重奏団にクラリネットやアコーディオンその他を加えたような大所帯で、本当に華のある楽団だ。トップのオリジナルナンバー「Swing 99」からその魅力が爆発している。次いで ミュゼットのコンピ名盤「Paris Musette」にも収録されていた「Passione」だが、これがまたイイ。そう、このアルバムを端的に評するなら、「Paris Musette」の世界に惚れ込みながらも「もうちょっとギターの響きが欲しい」と思っている人にぴったりのアルバムなのかも知れない。ミュゼットの他にも、ロシア・ツィガーヌ風の「Mademoiselle de Bucarest」やオシャレなボッサ・スウィング「Sinto Bossa」、リズムにアフロ風味を加えた「Redola」、はては Big Bill Bloonzy の「Take This Hammer」まで、こんなに貪欲で楽しいマヌーシュ・スウィング・アルバムは聴いたことが無い。ユニットの魅力を前面に打ち出してはいるが、ちゃんと幽玄なギターソロ曲「Volo」だって用意されているしね。そうそう、脇でリズムを締める Loenardo Boni と Luca Giovacchini のギターも、細かな工夫が色々と勉強になるです。