2005年2月27日
日本 1956-8-10 〜 ハワイアン スティール弦ギター フィンガーピッキング スラックキー
東京出身。 学習院大在学中にプロとして活動を開始、以降ロック、ジャズ、クラシックと様々なジャンルにわたり研鑽を重ね、現在ではスラックキーギターの実力者として評価を得ている。ハワイアン好きにはよくある傾向だけど、彼の打ち込み方は音楽のみならずハワイの土着スピリチュアルに大きく感化されたもので、それは数年前に大病からの生還を果たした経験も大きく作用しているのだろうか。私個人も「楽園ハワイ」には少なからず都合の良い幻想を持ち合わせているけれど、それを自覚している故にハワイ音楽にもロックやジャズと同等のドライさとリアリティを求めるスタンスで向かい合おうとする。鴻池氏はどうやら、ハワイ音楽を触媒にして日本人のアイデンティティや失われた50年の価値観回復までを考えているよう。その辺は氏のHPを参照して頂きたいが、とかくミュージシャンが提唱する「愛と平和」は信用しない私でも、彼の言説には傾聴できるものを感じる。
'00年発表。本格的なアコギソロアルバムとしては二枚目の、スラックギーギター集。ボーカル入りとインストが半々の構成で、全体的に深いリバーブに包まれたロマンティシズムを強調した印象。個人的にはギターをゴリッとオンマイクで録ったような音が好みだけど、このアルバムは「浜辺の歌」といった日本唱歌や、寺山修司の詩にメロディを付けたオリジナル曲が鏤められていて、コンセプト的にもこの音でなければならなかったのかな、とも思う。特に後者の「海」は、寓話詩のようなシンプルこの上ない言葉が、スラックキーギターのハワイアンバンプにとてもマッチしていて、目(耳)から鱗が落ちる思いだった。「詩」という、エッセンスを分離抽出されて純度100%に高められた言霊の力と、シンプルなギター。この類の試み、もっと見せて欲しいなぁ。そうそう、スラックギーギターをじゅうぶん堪能できる無伴奏ソロナンバー、「Ku'ulei Awapuhi」「Maori Brown Eyes」「I Can't Sing The Last Song」も勿論お勧めです。