2006年3月19日
日本 ロック ガットギター スティール弦ギター フィンガーピッキング ユニット
東京は国立を根城に飄々と活躍するベテランギタリストが組んだアコギデュオ。メンバーはラグタイムやブルーズといったルーツミュージック指向の古澤正昭(鉄弦ギター/ドブロ/ウクレレ)と、'60年代アメリカンロックの洗礼を受けた石渡洋(ガットギター)。
音楽を評するときにしばしばお目にかかる単語、「自然体」。批評側の無能さ、感性の鈍さを露呈してしまうようでいささかバツの悪い言葉だが、この二人のギター弾きを賛美する気持ちを言葉にしようとして、他の表現ができない自分がいる。ギタリストたるもの、タッグを組んで表現活動を行おうとするなら、ギターテクだったりアレンジだったり選曲だったり、何処かに「力こぶ」が入っていて当然なのに、この二人にはそんな鬱陶しさが無い。ポップスのゴールデン・エラを通過してきた彼らの芳醇な音楽体験の年輪が、わかりやすく滲み出ている。
美しく盛りつけられた主菜じゃなくて、大盛りの旨い米の飯。イタリア製のスーツじゃなくて、ヘインズのTシャツ。そんな具合に、生活とともにある音楽として連れ添って行きたい。
'03年発表のビートルズカバーアルバム。勿論、オールインスト。「All My Loving」や「She Love You」といったヒット曲が中心だが、ヘンにマニアックな選曲でない所も美点だ。なにせどの曲も、ちょっとラテンがかったリズムの上で、西海岸風の低湿度アコギサウンドがスウィングするという、悪く言っちゃえばワンパターンなアレンジ。手なりから生まれたであろう、こんな見栄も邪心もないサウンドには、これらオーディナリーなナンバーこそが映えるのだ。あえて左右への振り分けを抑えた録音がまたオールディーズ風な音の厚みをもたらしていて、Hi-Fi より Good Music って意志が明瞭。
Steven King のビートルズカバー集を聴いた時もぶっとんだが、このアルバムはまた違った意味で文句ない傑作。この「赤ジャケ」Vol.1 に続く「青ジャケ」の Vol.2 も出ているが、そりゃあ良いに決まってるよね!
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