2004年10月24日
日本 1970-1-7 〜 ロック スティール弦ギター フラットピッキング
ロックシーンにおいてエレキギター・インスト中心の「サーフロック」と呼ばれる形態は、かなり興味深いジャンルじゃなかろうかと思っている。それは現在活躍しているプレイヤーが、シーンが一度絶滅に近い状態となり後継者が無くなった後で、当時の空気や技法などを知らないままに古い音源等の「遺産」を元に自己のイメージを多分に投影させた活動を行っているように見えるからである。だからたとえば、「オヤジバンド合戦」みたいなイベントでベンチャーズのコピーを嬉々として演奏するような熟年バンドと、ニッポン・サーフロックの代表格 The Surf Coasters がもし共演したとしても、相互理解は成立しないんじゃないか、などと思えてしまうのだ。
中シゲヲは、その Surf Coasters のギタリストにして中心的存在のオリジナルメンバーであるが、彼がこのバンドを立ち上げるきっかけだったのは、サーフロック好きの仲間とアマチュアバンドを組んで熱心なライブサーキットを積み重ねていって... という訳ではないのである。全ての楽器を一人で宅録したデモテープのレコード化だったという。このあたり、Tascam Porta-Two とチープな機材で Beatles や Simon & Garfunkel から果ては XTC の音世界を構築しようと夢見ていた過去がある自分には、はたと膝を打つようなところがある。だから当然、プロとなった後の中シゲヲの活動はストイックにサーフロック一直線、なんてことは全然なくて当然のように雑食性の食い散らかし放題である。そんな、波乗りならぬ漂流ロックの Surf Coasters に変わらぬ期待を寄せる、「SURFPANIC '95」以来のファンのワタシである。
寒い冬を迎えようとしていた'03/12に発表された The Surf Coasters の「冬版サーフ」ミニ・アルバム。つまり、全曲アコギインスト!! サーファーでアコギ、というと Jack Johnson のようなフォーキーでオーガニックな人肌サウンドのイメージがすっかり定着した昨今だが、根っからのエレキ野郎である中シゲヲに限ってそんな定石はあろう筈もなかった。Dick Dale のアイコン「Misirlou」のアコギアレンジあり、加山雄三が幸せだなぁと呟く日本的原風景の「湘南サンセット」であったり、良い意味で俗っぽく予定調和いっぱいの「ぬくぬく」アコギサウンドである。確かに冬向き。
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