2004年5月26日
ブラジル 1937-8-6 〜 2000-9-26 サンバ/ショーロ ボサノバ ガットギター フィンガーピッキング
冒頭から乱暴に言い切ってしまおう。ボサノバギターのカリスマ、Baden Powell は誰よりも優れた「リズム・ギタリスト」だ。実際、彼の本質はサンバのそれと同様に、彩り豊かで深く、官能的なそのリズムに負う部分が多い。単なるギタリストというよりは、作曲も含めたスケールの大きな音楽家である Baden だが、情熱の多くはアフリカ系ブラジル人の音楽的ツールの探求、ひいてはサンバのリズム面における進化と深化に向けられたのじゃないだろうか。そこに当時興っていたボサノバ・ムーブメントを契機とした複雑な和声感覚が加えられることで、唯一無二のギタリスト Baden Powell が形づくられたという訳だ。なので、冒頭で言った言葉を早くも取り消さなきゃならん。Baden Powell はクールでシャレオツな「ボサノバギターのカリスマ」なんかじゃない。熱い生命が躍動しほとばしる「ラテンギターの神様」だ!!
MPS時代の3枚「Tristeza on Guitar」「Poema on Guitar」「Apaixonado」を2CDにまとめた凄いリイシュー(ポリドールさん、パチパチ)。1曲目「Tristeza」のイントロのチョップを聴くと、今でも肌が粟立つ。出世作となった無伴奏ギターソロ曲「Samba Triste」もいいが、このアルバムを支配している熱気のほうが個人的に好き。ギター演奏が白眉なナンバーでは、野心的なバッハ風の「Invencao Em 7 1/2」や Monk 作品をぐいっと手元に引き寄せた「'Round about Midnight」が目立つ。アフロサンバの探求に留まらず、貪欲にクラシックやビパップへも向かって行った若くて狂熱の時代の軌跡がここに。
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