2009年1月19日
ベルギー 1957-2-1 〜 クラシック ガットギター フィンガーピッキング 女性ギタリスト
スペインはバレンシア東部のカステリョンで、夏に行われる「フランシスコ・タレガ・ギター・コンクール」なる国際コンペがある。Raphaella Smits は、'86年にそこで初めてベルギー人で優勝を勝ち取った女流クラシックギタリストだ。アカデミックな音楽一家に育ち、12歳からギターを弾き始めた彼女は、アントワープ王立音楽院で本格的に Victor Van Puyenbroeck に師事。前述のコンクール制覇の後、多数のレコーディングや(数度の来日も含め)コンサートを重ねて評価を固めつつある。通常のギターの低音域を拡張した、8弦8コースのギターを常用しているのもユニークだ。古典から現代ものまで、オールマイティにこなすギタリストだけど、本人曰くメルツやジュリアーニなどロマン派のレパートリーが好みなのだとか。これらの楽曲は感情移入が過剰だと鬱陶しくなってしまうきらいがあるが、快活で小気味よい Raphaella Smits のギターにかかると別物のような表情を見せる。古い楽曲に新しい命を吹きこむちからを持った、注目に値するギタリストだ。
'99年発表の、Fernando Sor (フェルナンド・ソル)と Napoleon Coste (ナポレオン・コスト)の作品で構成されたアルバム。両名とも19世紀に活躍したギター作曲家で親交もあったらしい。この二人、練習曲も数多く書いており、クラシックギターを学ぶ者にとっては避けて通れない存在だ。筆者的には、「中には良い作品もあるけど総じて地味だし退屈」というイメージがどうしても強く、ずっと食わず嫌い(正確にはつまみ食い)してきた作曲家だ。ところが最近、若い世代のギタリストが弾くこれらの作品を聴いて「あれ? わりと良いじゃん」などと思う場面がある。自分が歳を喰って懐古的になったのか、それとも Sogovia 世代ギタリストの甘めの味付けを嫌っていただけなのか。
それはさておき、このアルバム。Sor では悲歌風幻想曲(作品59)、Coste は大セレナード(作品30)という長尺のナンバーを取り上げていて、よくある小品集ではなく、がっぷり四つに組み合った力の入った録音という印象。その一方で有名なソルの「月光」(作品35-22)を挟み込む等、構成に起伏を持たせる配慮もある。大曲指向ではあるけれど、演奏はいずれも軽やかで、それでいてドライ過ぎず、好感が持てる。クラシックギターを聴く楽しみが今になって広がったみたいで、なにやら得した気分にさせてくれた一枚だった。
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