2004年2月22日
USA 1923-3-3 〜 2012-5-29 カントリー フォーク スティール弦ギター フィンガーピッキング フラットピッキング
'60年代初頭に吹き荒れた米フォーク・リバイバル。ご存知のようにそこからは、Bob Dylan のような今に続くビッグスター達が誕生した訳だが、たとえば Dylan が「言葉の鉄人」であるなら、「ギターの鉄人」はこの人であろう。盲目のシンガーにして超絶ギタリスト、Doc Watson だ。生まれはアメリカンフォークの故郷、アパラチアン山脈が縦断するノースカロライナ。幼くして失明した彼を支えたのは、音楽好きの家族たち。父からバンジョーを与えられて手ほどを受け、同様にして育った兄と街角でのバスキング。そんな毎日が地元ラジオ音楽番組でのレギュラー出演、国内巡業、遂に'63年のニューポートフォークフェスティバルでの大ブレイクへと繋がっていく。'60年代以降は息子の Merle と共にコンスタンスに活躍。'85年に事故で Merle を失うが、立ち直った以降もふたつのグラミー賞を受ける等、彼のキャリアを集大成するような実りある活動を続け、'12年に病没。神業的なギターのみならず、実に渋く味わい深い歌も含めて、その音楽は後続に多くの影響を与えた源流たる「深い河」。ルーツミュージック探求の徒には是非聴いて欲しい。
'64年、40歳となっていた彼の遅咲きな出世作。インストでは「Black Mountain Rag」と「Doc's Guitar」が収録されているが、この2曲が凄かった。前者はまるでフィドルのように快速でスムースなクロスピッキングが、後者もシンコペーションを織り交ぜたスリリングな速弾きツー・フィンガー。今のようにアコギインスト音楽がそうは豊富でなかった時期、それらがどれだけ聴衆を驚かせたかは想像に難くない。アルバム発売当時は、「ドックのブラックマウンテンを聴いたかい?」がギターフリーク達の挨拶だったとか。今の耳には地味な音楽に聴こえるかもしれないが、間違いなく「歴史を変えた1枚」なのだ。
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