2007年12月31日
日本 ニューエイジ スティール弦ギター フィンガーピッキング
長野県で活動しているギタリスト/シンガーソングライター、ついでにウクレレ弾き。年齢不詳だけど、どうやら和製フォークの洗礼を受けてきた世代らしい。となればギターサウンドも、アルペジオ主体で情緒的に和の旋律を爪弾く、みたいな先入観を抱いてしまうが、ところがどっこいなのである。ガツガツと低音弦をはじきながらストラムを交えて奏でられる、竜巻のようにうねりつつ疾走するアコギ・インストの数々は一聴の価値がある。
会社員のかたわら音楽活動を続け、'04年にインディーズでCDデビューした彼の初フル・インスト・アルバム。CD を手にとった時、収録された「風の子守唄」「桜舞う」「鰯雲を追いかけて」というタイトルの数々から頭をよぎったのは、小松原俊的ワールド。その予想は良い方向に裏切られた。確かに、繊細で静かに爪弾かれる「従来形」なナンバーもあるのだが、なんといっても「十三夜東山」や「グレイッシュ=ブルー」「SoRAN Soul Run」のような、荒々しく弦をかき鳴らしてグイグイと聴き手の懐に押し入ってくるパッションこそ、この人の持ち味だ。数多くの日本人アコギストを聴いてきたが、白人的アグレッシヴさを持ったモダンな奏法に、和の旋律・和声感がこれ程うまくマッチした例は珍しい。海外に向けて積極的にプッシュしたい、遅咲きながらも爛熟のギタリストである。