2008年11月23日
イギリス 1930-1-29 〜 2005-12-24 アバンギャルド ジャズ/フュージョン スティール弦ギター
一般には馴染みの無いアヴァンギャルド・ミュージックではあっても、例えば John Zorn、Henry Kaiser、Fred Frith といった人脈に食指が動くとんがったロック好きなどであったら、このギタリストには早晩ブチ当たる筈である。フリー・インプロヴィゼンション・ギターの大御所、Derek Bailey だ。彼自身の言葉を借りると、「ノン・イディオマティック・インプロヴィゼンション」と呼ぶらしいが、Ornette Coleman のサックスがジャズという支柱にちゃんと求心力を得ていることを思えば、成る程この人の放つ音は核戦争か波動砲で破壊し尽くされた荒涼とした大地に屹立しているかのように寄る辺無く、意思強靭だ。
幼少期に音楽教育を受け(同窓に作曲家の John Duarte がいたとか)、ショービズの世界でジャズやダンス音楽を演奏していた若き Bailey がインプロヴィゼンションの世界に身を投じるのは'60年代の頃。'70年には、この種の音楽の草分けレーベルである Incus を立ち上げ、様々な方面の多彩なアーティストとコラボを繰り広げつつ、影響力を増して行く。前述の John Zorn や Brian Eno などは、Bailey に魅せられてしまったひとたちだ。全てが台本の一部のように進んで行く堕落した日々(©中村一義)に倦んでしまったら、Derek Bailey のギターに向き合ってみたらどうだろう。居住まいを正さずにいられなくなるだろう。
おそらく、Derek Bailey の音楽は演奏行為こそが目的で、コレード等は副産物というか日記みたいなものでしか無いのだと思う。このノイズだらけの CD は、'80年にフランスで催された日本人舞踏家・田中泯との競演舞台を収めたもの。カセットで収録され、CD化以前はプライベートで配布されていたものらしいが、肝心の舞踏を観ることもできなければ、最低の音質で切れ切れに聴こえる Bailey のアコギ(フルアコのアンプラグド?)は拷問でしか無いかもしれない。そうであっても、不屈の創作家の生を映し取った、確かな「記録」なのである。
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