2007年10月2日
USA 1913-3-31 〜 2006-9-23 フォーク ブルーズ スティール弦ギター フィンガーピッキング 女性ギタリスト
コアなブルーズファン以外には馴染みの薄いであろう、ピートモンド・ブルーズという聞き慣れない言葉がある。合衆国東部のアパラチア山脈に沿って位置するピートモンド台地で育まれた、この素朴なカントリーブルーズは白人フォークからの影響が大きく、軽快な印象のラギー・ブルーズとでも言ったらいいだろうか。詩もリズムもヘヴィなデルタ・ブルーズとは対照的であり、ことさら取り上げられることも少ないようだ。しかし、アコースティックギタープレイヤーという切り口で見たとき、ピートモンド・ブルーズは宝の山となる。ギター・ウィザード Blind Blake や 12弦のカリスマ Blind Willie McTell、そして近年93歳で大往生を遂げた女性フィンガーピッカー、Etta Baker らがそうだ。
アフリカ黒人やアメリカインディアンの血筋を持つ彼女は音楽一家の中で育ち、早くからギターやバンジョーに親しんでいた。'56年、Tradition Records レーベルのオムニバス盤で初めてレコーディングを行う。本格的にステージに立つようになったのは、それから更に数年を経た60歳頃からだという。シンガーでなかったせいか知名度は低いが、Taj Mahal を始め多くのミュージシャンが愛した Etta Baker の素朴なギターは、まさに野に咲く花のようであった。
'99年、リーダー作としてはおそらく2作目となるこのアルバムは、カントリーブルーズとしては異例の完全ギターソロ・アルバムなのだ。Etta Baker のミュージシャン活動はパートタイム的なものであったと思われるが、それだけに収録されているトラッドを中心にした19曲(!!)は彼女の人生にぴったり寄り添ってきた、愛おしいナンバーばかりなのである。トップの「Carolina Breakdown」はバックで鳥のさえずりが聞こえるのはホームレコーディングだったのかな? 「Browns Boogie」はシングルノートのブギーなフレーズとストラムを織り交ぜた、珍しくワイルドな印象。「John Henry」は2ndギターに Tim Duffy を迎えて、これまた珍しいスライドギターを披露。指さばきはレコーディング時に85歳を超えていたとは思えない確かさだし、これからカントリーブルーズ・ギターを弾いてみたい向きには教科書のようなアルバムかもしれない。
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