2010年3月22日
USA ニューエイジ スティール弦ギター フィンガーピッキング
マサチューセッツのニューエイジ系アコギスト。アコースティックギター・ソロの世界は作曲から演奏まで一人で完結できる世界が強みだが、彼の場合はそれに加えてギターの製作まで行ってしまうという徹底ぶりである。それも趣味レベルの手作りではなく、きっちりと工房を構えて「Ciluzzi」の銘入りモデルを供給している職業ルシアーさんなのだ。プレイヤーとしては新興アコギレーベルの CANdYRAT に籍を置いているが、ハデなテクニシャンが多いこのレーベルにあって彼は「穏健派」とでもいうべき、メロディや叙情性を大事にしたカラーが持ち味。
'07年のデビュー作。12曲のオーバーダブ無し完全ギターソロによる、私歌集的な色合いのアルバムだ。インナーによる自身の解説には、この曲はサンタフェで書いたもので、これはケープ・コッドで... とギター旅行記みたいだが、確かに Windham Hill っぽいギターサウンドは風光明媚な自然を映し取ったかのように優美で穏やか。タップやボディヒット等のギミックは、曲を適度に引き締める程度の最小限に抑えられていて、理想的なバランスに思える。ギターソロの作曲という観点からみた時に非常に勉強になるんじゃないだろうか。
さて、トップナンバーの哀しげな「Abyssal」は正直、印象にのこらないと思ったが、続く「Nocturne」以降を聴き進めていくと次第に耳を奪われている自分に気づく。なんだかコードやフレージングに Alex de Grassi の影がちらつくナンバーもあるけど、別に貶めている訳じゃなく、Grassi レベルの作曲力をこのギタリストが持っているってことだ。最初こそ「地味だなー」と思いながらも、聴き返す度にどんどん滋味が体に染み渡ってきて、いつのまにか愛聴盤になってしまうことがタマにある。このアルバムにもそんな予感を感じる。