2004年6月26日
USA 1895-1-5 〜 1987-6-29 フォーク ブルーズ スティール弦ギター フィンガーピッキング 女性ギタリスト
Bob Dylan をはじめ多くのミュージシャンに影響を与えた、伝説の黒人女性フォークシンガー。シンガーといっても、彼女のミュージシャンとしてのキャリアは齢40を過ぎた頃、偶然フォークソング研究家 Mike Seeger (あの Pete Seeger の父である)の迷子になった子供を保護したことから始まる。それが縁で Seeger 家でメイドとして働くようになった彼女は、Seeger 一家のホームコンサートでギターを借りて演奏しているうちに、幼い頃に憶えた唄とギターを思い出して爪弾くようになっていた。それが Mike の心をわしづかみ(^^)、'58年にはレコードを出版するに至っている。63歳のデビューという幸福な逸話である。
自分が楽しむ為に独りで見よう見まねで憶えたギター(彼女は左利きで普通のギターを逆さに持って弾いていた)は、観客の前で鍛えられた演奏とはまた別の存在感とオリジナリティを獲得している。日だまりの様に暖かくボヨヨンとしたフィンガーピッキングは、Mississippi John Hurt を連想させなくもないが、リズムは妙な重量感があり John Fahey が影響を受けたことを聞くと、非常に納得できる。
後年は数々のフォークフェスティバルに出演しながらアルバムの発表を重ね、多くのアメリカ人に愛された。その独特なギター奏法は、ベース音を人差し指ですくい上げる様に弾くしぐさから、綿摘みと彼女の名前とをひっかけて「コットン・ピッキング」と呼ばれている。
'58年のこのデビューアルバムは、Mike Seeger 宅で録音された。彼女が12歳の時に作った、今ではアメリカンフォークのスタンダードにもなっている「Freight Train」が収められている。そして見逃せないのは、数々のギターインストナンバーたち。アルバム冒頭のラグタイム「Wilson Rag」を是非聞いてみてもらいたい。初めて聴いた時はリズムも不正確だし、抑揚に欠けた曲だなぁと思ったのに、繰り返し聴く程にこれほど愛が深まっていく(何故なんだろう?)曲はそうザラに無い。
ジャケットで抱えたマーチンのドレッドノートがやたら大きく見える。小柄な人だったんだろう。日常の「小さな幸せ」を詰め込んだような、涙モノの一枚です。
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