2004年10月3日
フランス 1957-8-19 〜 アバンギャルド ジャズ/フュージョン スティール弦ギター
パリ生まれのフリー・ジャズ・ギタリスト。とはいうものの、Marc Ducret の予測不可能なギターをジャズの範疇に押し込めてしまって良いものか。アバンギャルド畑のギタリストといえば、Fred Frith や Henry Kaiser が思い浮かぶが、例えば Fred Frith の表現には旧い束縛からの解放という意志が芯となって表れているように感じる。それに対して Marc Ducret のそれは体臭の一部というか、天然に近いものに思えるのだな。どこがそーだ、と聞かれると答えに窮するが。そのせいかどうか知らないが、アバンギャルドが得意とは言えない自分だけど後期の John Fahey や Jim O'Rourke あたりの「音響派」ミニマル的拷問よりは余程リラックスしてリスニングできる。
しかし聞けばギターも全くの独学だというが、どのような道筋を辿ればこんな音楽が出来上がるのか。音楽プレス等にもインタビューらしきものは殆ど見かけないが、みんな、興味ないのか?
'96年、ヨーロッパの知性派ジャズの新興レーベルとして名声を高めつつある Winter & Winter レーベルからの、全編スティール弦アコギによる一発録りインプロヴィゼイションアルバム。ギターの音が時々二本ぶん聞こえるのは、ダブルネックギターを使っているから。ジャケットの絵は19世紀の「メデュース号の筏」。人間の暗黒面をえぐり出したダークサイダー好きのする怪作だが、アバンギャルドミュージックの印象を語る為に「この絵画をコンセプトにしてアルバムは云々」等と語ろうしてもそれはなかなかに空しい行為だと思う。調性や構造を音学的にとらえようとするのも同様。バックボーンや手法・構造をネタに饒舌に語れてしまう音楽というものは、ある意味堕落してしまった表現かも知れない。
このテの音楽は苦手という人も多かろうが、私の場合は徹底して何度も聴き返してアタマの中に曲を丸ごとホログラムの様に輪郭づくっていく。そうすると、緊張の中にある美しさや躍動感のある部分がマッピングされて行き、やっと「好きか嫌いか」くらいの判断は出来るようになってくる。レベルの低い話かも知れないが、「何だこりゃ?」というゼロの状態と「むー、ここが好きだなぁ」という一歩目の差は大きいと思うのだ。即行で作られた音楽だからって、感動もリアルタイムって訳には行かないのだな(私だけか? ^^)。
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