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    アコギスト宣言!!

    William Ackerman (ウィリアム アッカーマン)

    2004年10月7日

    USA 1949-11-16 〜 ニューエイジ スティール弦ギター フィンガーピッキング 変則チューニング

    プロフィール

    '80年代以降のアコースティック・ミュージックの指針となった、WindhamHill レーベルの創設者であり、同レーベルの主要ギタリストの1人でもある。ちなみに、同レーベルの看板ギタリストであった Alex de Grassi とはいとこ同士だという。
    ティーンの頃はロックンロールに夢中だったという Ackerman だが、高校生あたりから John Fahey, Leo Kottke, Robbie Basho といったフィンガーピッキングスタイルのアコースティックギター音楽に傾倒していく。思えば、これらの個性的なアーティストが属していた Takoma レーベルと、レーベルの創設者であってオールドタイムな音楽に造詣が深く、かと思えば独自の音空間を作っていた孤高のギタリスト John Fahey の存在は、その後の Ackerman の方向性を決定づけていたように思える。
    頭脳明晰な彼は飛び級で入学したスタンフォード大で歴史を学んでいたが「体を使ったものづくり」への欲求に耐え難くなり、中退後に大工仕事を始めて工務店まで起こしてしまう。その会社の名前は、Windham Hill Builders。そんな日々の中、自作のアコースティックギター演奏がひょんなことからラジオでオンエアされて好評を博す。これがきっかけで Ackerman が友人から数ドルずつカンパを集めて興したレーベルが WindhamHill、というのは有名な逸話である。その後は皆さん御存知のとおり。ピアニスト George Winston の大ブレイクで WindhamHill が指向した音楽は「ニューエイジミュージック」という商品にカテゴライズされ、粗製濫造の時代を迎える。そんな状況を Ackerman はどう思っていたか定かでないが、'84年にレーベルのCEOを退き、'92年にはその資産も全て売却してしまったというから推して知るべしだろう。現在では、バーモント州に自らの創造拠点 Imaginary Road Studios を設立、多彩なメディアを対象に新たな活動を開始している。

    アルバムレビュー

    Passage

    '81年、WindhamHill からの四作目。それまで彼が培ってきたギター音楽の集大成的なアルバムで、過去のナンバーをアンサンブル化してみたり、逆に合奏されていた曲をギターソロにしてみたりと、あれこれ完成度を高める工夫が見えて興味深い。デビュー作の頃に見え隠れしていた John Fahey や Eric Satie らの影響は本作ではすっかり独自の作風に昇華されている。Ackerman は同レーベルの Alex de GrassiMichael Hedges と比べてテクニシャンでは無いが、新しいチューニングをあれこれ試しながら「霊感」が降りるのを待つという、曲とチューニングを抱き合わせた独自の作曲方法を持ち、これがワン・アンド・オンリーな存在感をもたらしている。フォークやブルース、ミニマルミュージックの要素を全て持ち、メロディ主体の演奏ではないのに、聴いた後に耳にくっきりと残るポップな旋律。こんな世界を、このアルバムの「Processional」や「Anne's Song」、「Impending Death of the Virgin Spirit」そして「Bricklayer's Beautiful Daughter」を聴いて体験して欲しい。
    ちなみに本作はその昔、ドレミ出版からスコアが出版されていたのだが現在では絶版状態らしい。筆者はそれまで、イレギュラーチューニングといえばGやDのオープンチューニングしか知らなかったが、Ackerman の作品を実際に弾いてみることでオリジナルチューニングの不思議な響きを体験できたものだった。初心者でも演奏可能なギターソロとして良いガイドだったのに、残念。

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