2006年4月30日
ブラジル サンバ/ショーロ ガットギター フィンガーピッキング
ブラジルの七弦ギター奏者ということ以外、詳細は不明。七弦ガットギターというと、ショーロでお馴染みだが、そのショーロの花形弦楽器であるバンドリンの若手スタープレイヤー Milton de Mori などと共演歴があるらしい。そんなだからバックボーンにショーロがあるのは間違い無いだろうが、演奏を聴く限りではクラシックからサンバまでを自由に行き来できる度量の深さとしなやかさを備えたプレイヤーのようだ。ネットでも情報らしい情報もなく、不思議であり残念。
'04年発表の、無伴奏ソロギターによるブラジリアンナンバーのカバーアルバム。トップナンバーの Joao Donato 作「Lugar Comum」を聴いて、「ああ、ジェントルでロマンティックな嗜好のヴィオロニスタなんだな」と決めつけたが、続く Baden Powell の名曲アフロサンバ「Berimbau」を聴いて早計に過ぎたことを気づく。触感は柔らかくても骨太でグイグイ迫ってくる力強さは、Baden の凄みを全くスポイルしていない。Jobim の「How Insesitive」も驚きだ。緊張感あるアルペジオから始まってルバートにインテンポに、目まぐるしく変奏を重ねるが6分強の長尺を感じさせない見事な解釈だ。Dorival Caymmi の「Saudade da Bahia」もボッサ・ギターソロの教科書にしてしまいたいカッコ好さだし、手垢のついた感のある Nazareth の「Escovado」だって、まだこれだけ新鮮な魅力を引き出せるんだ、と感嘆。いずれにしても七弦ギター特有の低音の豊かさ・迫力を十二分に生かした、特筆すべきアレンジ力である。聴き終えてみたら、一分のスキも無い鉄板ギターアルバムじゃないか。多少の入手困難さを乗り越えても、コイツは聴くべしです。
下にあるアマゾンのアイコンをクリックすると、この CD を購入できます。