2008年11月2日
ブラジル サンバ/ショーロ ガットギター フィンガーピッキング
ブラジルは北東部の伝承音楽、所謂セルタネージャに属する新進気鋭ギタリスト。師匠はなんでも、やはりセルタネージャギターの第一人者である Francisco Araujo らしい。ギターの腕前はというと、もう師匠とクリソツというか、見分けがつかない程よく似ている。
農民の生活の中に生まれた素朴な弾き語りを起源とするセルタネージャだが、時代を経るに従って米国カントリーの影響を受ける等、絶えず変質と枝分かれを繰り返しているという。ギターのインストを表現形態にする Francisco Araujo 一派の音楽は、ある種学究肌な側面があり、ブラジルヒットチャートを賑わすベタベタなセルタン歌謡と比べると、とても同じ音楽を祖先に持つとは思えない。Marcos Gomes という優れた継承者を得て、セルタネージャ・ギターソロという種がこの先どのように進化して行くのか、じっくり見守りたい。
'04年のソロ第一作。自身のギターソロ、あるいはオーバーダブによる重奏という、ギター100%なマヂメなアルバム。Francisco Araujo のアルバムを聴いたときは、結構ハチャメチャだな、と思ったが、弟子のこの人の演奏にはクラシックギターっぽいストイックな雰囲気がある。14曲中の10曲が Araujo の作品。トップナンバーの「Forro Antigo」こそ典型的なセルタネージャではあるものの、聴き進めるうちにヘンテコな日本解釈が爆発の(どう聴いてもチャイナだろう... 苦笑)「Impressoes Niponicas」や、硬質でカッコ良いボッサ風の「Forro Antigo」等、Araujo 一流の豊かなバリエーションが冴えている。Marcos Gomes 自身の作になる2曲も、「No mesmo pique」はショーロを思わせる情感に溢れ、「Eterna Paz」はスペイン古謡のような郷愁を思わせ、なかなかどうして師匠に負けていない。メインストリームとはひと味違ったブラジリアンギターが聴きたければ、是非この一枚を。
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