2006年9月17日
ブラジル エスニック サンバ/ショーロ ガットギター
セルタン出身の本格派ガットギタリスト。この地方の音楽においては、ギター類は鉄弦を張った小型のものを用いることが多く、Francisco Araujo のようなタイプはかえって珍しい。なんでも父親がギターからカバキーニョまで演奏するマルチプレイヤーで、そんな家庭で育つうちに彼も歌手を志すようになるが、途中でギターに転向したとこのこと。物心がついたときには一家はサンパウロに移っており、彼も Dilermando Reis や Paulinho Nogueira、Baden Powell らの演奏を聴くことで、生まれ持ったブラジル東北部の音楽テイストに都市音楽のモダニズムを融合させていったのだろう。我々日本人からすると、ブラジリアンミュージックの印象はショーロ、サンバ、ボサノバというブラジルのメインストリームで塗り潰されがちだが、是非とも Francisco Araujo 奏でる不思議な響きのセルタネージャ・ギターを聴いて、ブラジルの音楽密林の深さを知るべし。
'03年発表のギターアルバム。大半を自作曲が占めており、様々に繰り広げられる楽曲のバリーションに、プレイヤーにとどまらず作曲家としての才能すら輝かせている。最近のボッサやショーロの若手ギタリスト達を聴くと、テクニックの向上が物凄い反面、クラシックギタリストとどこが違うの? 的な贅沢な物足りなさを憶えるのだが、Francisco Araujo の少し荒削りでネイキッドなパワー溢れるギターは、そんな欠乏感を埋めてくれる。
それにしても、筆者がセルタネージャ方面に暗いせいか、哀しいのか怒っているのか、着地点があるのか無いのか、初めて耳にする不思議なギタープレイの数々だ。「Uma Noite Em Haifa」はチャイナ風味のトルコ行進曲みたいだし、「Na Onda Do Rock And Roll」なんて Frank Zappa に聴かせたくなるような凶暴インプロヴィゼイションだ。いやはや恐るべし、彼の引き出しはいったい幾つあるんだろうねぇ。