2005年4月18日
ブラジル 1916-9-22 〜 1977-1-2 サンバ/ショーロ ガットギター スティール弦ギター フィンガーピッキング
'40年代から'70年代のブラジルにあって、Garoto と同時期に活躍し、今日のショーロやサンバをかたちづくる上で重要な存在であったのが、サンパウロ生まれのギタリスト Dilermando Reis である。管楽器が花形であった初期ショーロ時代に、ヴィオラ(ギター)を中心にした演奏活動を行ったことや、その非凡な作曲の才能から近年では彼の作品がクラシックギタリストにも頻繁に取り上げられている点なども、Garoto と共通している。ラジオやコンサートを通して活発な活動をおこない、録音したレコードはSPも含めて40枚以上ということだが、現在CDリイシューされているのがそのうちの一部である状況は寂しい。
余談めくが、私が初めて持ったギターは父親から譲り受けたスクラップ寸前の、鉄弦を張るタイプのクラシックギターだった(指盤、ブリッジ、ペグ等の形状は少なくともウェスタンタイプではなくクラシックギターライクだった... KOGAと銘板が打ってあったな)。今ではこんなヘンなギターは製造されていないのだろうが、Dilermando Reis が弾いていたのがスティール弦を張ったこの手のギターだったらしい。日本のギター製造史にはてんで無知だが、誰かこの両者の関連等について御存知だったらご教示賜りたいものだ。
'72年録音の Pixinguinha 作品集。Dilermando Reis 自身も破格の作曲家ではあるが、その彼からしても Pixinguinha はやはり格別の存在だったのだろう。「Lamentos」や「Cheguei」、「Ingenuo」といった超有名ナンバーが、バンドリンではなくギターで聴けるのはアコギファンとして何とも嬉しい。全ての曲がガットギターとスティール弦ギターの二重奏で演奏されているが、特にクレジットも見あたらないので、どちらも Reis による多重録音だろう。ガットギターが低音部も含む伴奏で、スティール弦の方がソロを取るアレンジになっている。Garoto のような狂気すら感じさせる凄みといったものは此処には見あたらず、ショーロの現人神とも言える偉大なコンポーザに敬意を表するかのような滋味溢れる味わい深い演奏が、なんともいえず和みを醸し出していて良い。