2006年5月7日
USA 1917-8-22 〜 2001-6-21 ブルーズ ロック スティール弦ギター
ブルース系ロックに拘りをもつ人の耳には「クロスロード」という言葉は妖しいオーラを伴って響く筈だ。Robert Johnson が悪魔に魂を売り渡して名声を手に入れたという十字路。ミシシッピのクラークスデイルにあるハイウェイ49と61が交差するこの伝説的なポイントは、観光名所化してしまって訪れるロックファンを落胆させているらしいが(笑)、この土地で生まれたロックとの縁浅からぬギタリストが John Lee Hooker。'48年のデビューから'01年に自宅で大往生を遂げるまで、常にロック・ブルーズのスピリッツの源として君臨し続けた無頼だ。
グイグイとワンコードで押しまくるブギー、極上のカッコ良さで唄にレスポンスするギターという彼のイメージはやはりエレクトリックギタリストの姿だが、デビュー当時は足でバタバタとリズムを取りながらのアコギ弾き語りのスタイルだった。小作人の家に生まれ、養父からギターを教わったということだが、このデトロイトブルースのスターが何者でもなかった頃にミシシッピの土の上で響いたギターはどんな音だったのか... アコギ指向のロック好きなら、Lightnin' Hopkins と並んで初期の John Lee Hooker は必須科目と言えよう。
デビュー曲「Boogie Chillun」のヒット直後になる'49年の録音をコンパイルした初期アウトテイク集だが、重要なアルバムだ。何故って、貴重なアコギインストの「Guitar Blues Instrumental」を含んでいるから、というのは本気80%の冗談だが、インストは置いておいても是非聴いてもらいたいカッコ良さなのだ。Hooker の声とギター(と足音)だけで鳴らされるこの芳醇さ!! シンプルであっても「間」というかツボを押さえたギタープレイのお手本だ。「When the sun goes down...」と呟いてからチューニングを兼ねたみたいなルバートなギターリフが次第にリズムを刻みだし、静かに一節目を歌い出す11曲目なぞ鳥肌モノだ。彼の味わい深い歌声なしに成立しないプレイだし、誰にでも真似できるものじゃないけれど、弾き語りの最上形として座右の音盤にしておきたい一枚。
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