2010年1月31日
USA 1950-4-19 カントリー ブルーグラス スティール弦ギター リゾネイトギター フィンガーピッキング フラットピッキング
ヒゲもじゃの顔に丸眼鏡をかけた、人懐っこいクマみたいなギタリスト。Dakota Dave Hull は、名前のとおりノースダコタ出身の筋金入りルーツ・ミュージシャンだ。両親はそれほど音楽好きでもなかったようだが、それでも(主に教育目的で)小さな Dave 少年にギターを与えたりピアノを習わせたそうだ。10歳の時に参加したサマーキャンプで体験したキャンプファイヤーでのギターかき鳴らしならのフォーク・ミュージックに魅了された彼は、以後、ルーツミュージック探求の長い旅に出ることになる。時代はおりしもフォークリバイバルの熱狂の中にあり、多くのギター青年達がしたように Dave もまたコーヒーハウス・サーキットで腕を磨いていく。'84年にアコースティクミュージックの名門 Flying Fish レーベルから遅咲きのデビューを果たす。しかしそれは時代の風向きはとうに変わり、エレクトロポップが MTV で吹き荒れる逆境の中。Flying Fish も程なくしてオーナーの死去による解散の憂き目に会うが、Dave は自身のレーベルを立ち上げてスタジオを建設するなどして、若いミュージシャンの発掘や育成も行い、自分の愛する音楽の守役を努めるかのように着実な歩みを四半世紀の間続けてきた。アメリカ音楽の懐の広さと Dave のような男がある限り、私達の愛するアコースティックミュージックは決して死なないのだ。
ジャケはどうみても'70年代前半の雰囲気だが、正真正銘の'84年のデビュー作である。「Steel Guitar Rag」「Blackberry Blossom」「Bill Cheatham」「Whiskey Before Breakfast」といったブルーブラスの定番ナンバーと数曲のオリジナルから成る、純度100%のアコースティック・インスト・アルバムだ。ギターの Doc Watson をはじめ、マンドリンやドブロなど多くのメンバーに囲まれてのセッションワークが中心だが、曲名から連想されるコテコテのブルーグラスアルバムって雰囲気は無い。トップナンバーの「Steel Guitar Rag」を聴くとわかるが、ピアノが加わることでグラスの土臭さが抜けて、いい塩梅にアーバンなムードが効いている。大雑把に言えば、(グラス + モダンフォーク + オールドジャズ) ÷ 3 って感じだろうか。グラスっぽくソロを回していても、テンポも割と控えめだったりコンパクトにまとめられている等、テクニックを誇示する感じじゃなくアットホームなセッションの印象で統一されているのが良い。そう、所謂グッドタイム・ミュージックの良質なサンプルだ。後年フィンガーピッキングに比重を移す Dave だけど、ここでは堅実なフラットピッキングが冴えていて、Doc Watson との掛け合いも親子か兄弟の会話みたいに暖かい。
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