2004年12月25日
日本 1955-1-31 〜 ジャズ/フュージョン ガットギター フィンガーピッキング
数多い日本のジャズギタリストで、ガットギターを持たせたらこの人の右に出る者はそういない。19歳でプロ入りし、30年余のキャリアを数々のバンドで叩き上げてきたユニークではあるが誰もが認める実力者、加藤崇之である。近年ではガットギターでの演奏が多いが、デビュー当時はギンギンにエフェクトをかけまくったアヴァンギャルドなエレクトリックサウンドで周囲の度肝を抜いていたという。では現在では角が取れてしまったのかというと、さにあらず。一見ノーマルなアコースティックサウンドのようであっても、透明な響きを持つ硬質なプレイの下にある「さらに先へ、もっと遠くへ」とでも言うような独自表現への希求力の強さは明らかである。衰えぬテンションでもってワン・アンド・オンリーな道を歩き続ける姿はミュージシャンズ・ミュージシャンという趣もあり、鬼怒無月ら若い世代のリスペクトを集めている。
現在は自己のギタートリオの他、ボーカリスト宅朱美や、チェリスト翠川敬基、他多くのミュージシャンとの諸ユニットでエネルギッシュに活動中。
'01年発表。彼は'89年に「Guitar Music」というガットギタートリオによる初リーダー作を出しているが、このアルバムはいわばその続編とも取れる。前編は半数をオリジナルナンバーで固め、積極的にエフェクトも使用した意欲作だったが、10年あまりを経たここではサウンド的には落ち着いたものでありながら、より表現力をアップさせた幽玄なガットギターの響に満ちている。この二枚はそれぞれの魅力がありチョイスに迷ったが、全曲を巨匠のスタンダードで揃えたこの盤の方が奔放になりすぎることなく、アレンジの妙も味わえるという個人的な好みに合っていたので、推すことにした。とにかく原曲のイメージを粉砕する(といったら失礼なのかも知れないが)彼独自の解釈とアイディアが盛り込まれた、濃密な60分なのである。印象派的クラシカルなアプローチの「In a Sentimental Mood」(D.Ellington)、あえて鉄弦で冷ややかな美しさを際だたせる「Estate」(B.Martino)、聴いてるほうも鼓動が速くなりそうなバップ「All The Things You Are」(J.Kern)と、いずれも素晴らしい。アコースティックギターによるジャズアルバムとして、本邦最高傑作かも。聴くべし。
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