2006年7月2日
USA カントリー スティール弦ギター フィンガーピッキング
サンフランシスコをベースに活動している、所謂「グッドタイム・ミュージック」系ギタリスト・シンガー。カントリーブルースへの造詣が深く、プレイヤーの傍らギター講師もしており、「Acoustic Guitar」誌での執筆やスライドギターの教則本を出版する等啓蒙活動もなかなか。こう書くと学者肌のギタリストを想像してしまうが、Buzzy Frets という変名(プロジェクト?)でクレイジーなサーフ・ロッカーを演じていたり(エレクトリックも上手い!!)、枯れた所が皆無なのがイイ。アコギの演奏も、Bob Brozman ふうとでも言うか、ダイナミックで「熱い」プレイをする人なのである。Asylum Street Spankers あたりが好きな人だったら気に入るんでないかなぁ。
'03年のセカンドアルバム。Merle Travis や Robert Johnson らのカバー9曲と7曲のオリジナルチューンが、彼の唄とギターだけで奏でられる御機嫌な一枚。うち、2/3程がインストナンバーで、カントリー風快速リックや泥臭いスライドギター、John Fahey っぽいダウナーなブルース等々本当に様々なスタイルのギターが鏤められていて、ギター好きにはこの上ない御馳走だ。カントリーブルースの好事家という人種はおしなべて渋く迫ろうとするが、Pete Madsen は10代の少年のようにグイグイ速いテンポで走りまくったかと思うと、頻繁に荒々しいストラム(掻き鳴らし)を織り交ぜたりで、ブルーズの持つバイタリティを魅せてくれる。唄も、上手いというよりは近所の気さくな兄ちゃんのようで全くシブくない(笑)。この辺、ピアノラグの王様「Maple Leaf Rag」のカバーを聴けば分かってもらえると思う。多くのギタリストがピアノを意識して小難しく弾くなか、Pete Madsen の解釈は全くギタリストのそれでスパッと潔いのが素晴らしい。ここ数年で聴いたブルーズ系アコギの中で、最も楽しくて爽快なアルバムだ。めちゃ、お勧め。