2007年1月7日
USA 1904-1-12 〜 1972-7-3 ブルーズ スティール弦ギター フィンガーピッキング スライド
Robert Johnson、Son House らと並んでヘヴィな音世界を持ち、カントリーブルーズの重要人物として語り継がれる Fred McDowell。彼はメンフィス近隣のロッシヴィルという村の出だが、若くして父を亡くし14歳でダンス伴奏のギターを弾くようになっていたという。'59年に民俗音楽研究家 Alan Lomax に見いだされて初録音を果たす。それ以降は Rolling Stones が「You Gotta Move」をカバーし、Bonnie Raitt にボトルネックギターの極意を伝授したとか、ロック的な逸話にも事欠かかず本人の預かり知らないところでカリスマ性が肥大化していった訳だが、「俺はロックンロールなんか演らねえよ、演るのは只のAのブルーズさ。」と言い放っちゃったりでシビれることこの上ない。
さて、Fred McDowell の「重さ」は Robert Johnson の現世的な孤独感、Son House のキリスト教的な求道欲とはまた違った一種独特なものがある。唄に呼応して獣が吠えるようなスライド、執拗に繰り返されるワンコードに乗せて呟かれる呪術的な唄、心情を発露しきったところで事切れるように終わってしまう構成無視なそっけ無さ。すべてがワン・アンド・オンリーで、アフリカ黒人の血故か? と勘ぐりたくなるような原初的なパワーに溢れている。ギターだって勿論上手いのだが、聴いているうちにそんなことは忘れてしまう。ブルーズの必修科目にして初心者お断りの Fred McDowell。魂を持って行かれないように注意すべし。
'59年の「デビューアルバム」をデジタル・リマスタリングした CD がこれ。'97年、Rounder から。かれこれ半世紀前の録音だとは思えないくらい生々しい。後年にはエレクトリックも時々弾いた McDowell だが、ここでは全てアコギ弾き語り。唯一のインストは13曲目の「Keep Your Lamps Trimmed And Burning」だが、この30秒ちょっとのナンバーは「曲」というよりスライドギターのデモンストレーションみたいなものかも知れない。にもかかわらず、重いのだ、これが。そういえば、ロック系でアコギのスライドを聴き求めてみると、時々この曲を発展させて長尺にしたようなナンバーに出会う。秘めやかで妖しいこの曲の魅力が、そんなことからも判る。そして、続く14曲目の「You're Gonna Be Sorry」で、宗教的なリフレインが聴く者をトランスさせてアルバムは幕を閉じる。強烈無比。
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