2009年1月19日
イギリス 1965 〜 ケルティック/アイリッシュ スティール弦ギター フィンガーピッキング フラットピッキング
'60年代からアイリッシュ/ケルティック音楽とギター・ミュージックの融合に取り組んできたギター鉄人 John Renbourn をして、「今、最高のケルティックギタリスト」と言わしめたのが Tony McManus だ。ケルティックギターというのは定義があって無いようなものだが、それだけにプレイヤーのポリシーやセンス、技量がストレートに音楽に反映されるジャンルとも言える。例えば、十何本もの弦を張ったハープギターを駆使して、古代に想いを馳せるような幻想的な世界観を打ち出す John Doan のようなギタリストがいる一方、ケルトのエッセンスをコアに持ちながら、ジャズやワールドミュージックの手法をミクスチャーしてオリジナリティの要諦とする Pierre Bensusan のようなタイプもいる。Tony McManus は後者に近いスタンスだと思うが、Bensusan に比べて躍動感あるケルティックビート(?)が存分に味わえることもあって、より「ケルティック」的なのかも。
昨今、雰囲気先行の「なんちゃってケルティックギター」も多いのは残念だけど、その点 Tony McManus は生粋のスコットランド人であり、海峡を隔てたアイルランドの音楽魂は幼少のみぎりより彼の骨肉の一部な筈だ。間いやはや、ケルトという看板を外しても全てのギターファンを唸らせることが出来る、スケールの大きなギタリストである。
'96年に自主制作盤でデビューした Tony McManus が、その素質と成長ぶりをワールドワイドに知らしめることになった'02年の3作目。トップナンバーの「Sliabh Gheal gCua na Feile / Kishor's Tune」は、穏やかながらも硬質なケルティック・チューンだが、途中からタブラとウッドベースが参戦してインプロヴィゼイションを始めと、往年の Pentangle を聴いているような静かな興奮が沸き上がってくる。これは凄い!! 続く「Lady Ann Montgomery's Reel / Elish Brogan / Paddy Fahey's」はトラディショナルなダンス音楽のメドレーで、この種のアルバムでは定番とも言えるが、細かいビートを微塵の澱みもなく弾きだす技量を披露する McManus、恐るべし。4曲目は、これまたアコギストがよく取り上げる、ジャズベーシスト Charles Mingus 作の「Goodbye Pork Pie Hat」。ここでもベースが加わっていて、ケルトナンバーとはうって変わったハードエッジなギターがまあ、カッコ良いのなんの。5曲目「The King Of The Pipers」はフィドルでよく奏でられる躍動的なナンバーだが、ここではフラットピックに持ち替えて Dan Crary ばりのスリリングなプレイがたまらない。
長々と全曲褒めちぎってしまいそうなので筆を置くが、それほどに素晴らしいアルバムだと分かって頂けただろう。もし、タッピングビシバシだけがモダン・アコースティックギターだと思い込んでいるギターファンがいたら、この名盤を聴いてアコギの奥深さに開眼して欲しい。
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