2005年3月6日
アイルランド ケルティック/アイリッシュ スティール弦ギター
アイリッシュトラッドの大御所アコーディニスト Seamus Begley の伴奏を努めて実力が認められた、若手ギタリスト。彼自身も楽器を始めたのはアコーディオンやピアノという鍵盤モノだったが、12歳からギターに転向したとのこと。これは彼もまた Beatles や James Taylor、Jim Croce をフェイバリットに挙げる、世間一般の音楽ファンと嗜好を一にした世代であることと無関係ではないだろう。アイリッシュトラッドはギタリストにとっても魅力的な音楽ジャンルで、多くのアコギストがイレギュラーチューニングでギターソロにチャレンジしているが、Jim Murray はあくまでも伝統芸能的なアイルランドチューンの中でギターというアイリッシュトラッドでは比較的歴史の浅い楽器に真っ向から取り組んでいる。唄や他楽器との伴奏の中でこそ生きてくる、ギターソロではどうしても弱くなるリズムやダイナミクスを、彼のギターでは堪能し、楽しみたい。
'01年、Seamus Begley とのデュオ名義での、アイリッシュトラッドアルバム。Begley の胸を借りるかたちで、Jim Murray が生きの良い(強いて言えばやや直線的な)リズムワーク中心のバッキング・ギターを披露する。時として Begley はアコーディオンを置き、穏やかな唄声を切々と聴かせるボーカルナンバーも収められているだが、このバックで奏でられるギターが、撥ねるポルカの時とは対照の妙とでも言うべきか、またイイのである。そして、アルバム唯一のギター・インストである11曲目「The Hornpipes」は多重録音であるが、Jim Murray のギターを堪能するには絶好のナンバー。連結部にさり気なくブルーノートを織り込んで新しい世代の存在感を示そうとしているようでもある。シンプルでポジティブ、休日の目覚め後にCDトレイに乗せたら爽やかな一日を送れそう。
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