2004年2月19日
USA ブルーズ
私見だが、現在のようなアコースティックギターをメインにしたノンジャンルな(あるいはジャンル・ボーダーレスな)インストゥルメンタル音楽がハッキリとかたちづくられたのは、'80年代以降であると思う。それ以前のアコギ音楽は、ジャズやブルーグラスまたはフラメンコやクラシック音楽という確立されたジャンルの中にあって機能していたものが殆どであった。しかしそれでも、どのジャンルにも属さないアコースティックギター・ミュージックとしか呼べない音楽を創造していた少数の先駆者がいたことも事実である。音響派の祖として再評価の誉れ高い John Fahey、東洋指向の印象派とでも呼んだらいいのか Robbie Basho、そしてこの Rick Ruskin。
彼のキャリアは古く、'60年代初頭に地元デトロイトで中学生時代にギターを始め、Rev. Gary Davis に師事してすぐに実力を認められ、頭角を現している。このことから判るように、バックグラウンドにはカントリーブルースやラグタイム等の古い時代のポピュラー音楽がルーツとしてあるのだろうが、彼のギターを通じて編み出される音楽は端正で洗練されており、かつ芯の通った硬質なものである。'70年代にソロ作を連発して注目を集めたものの、それ以降は著名ミュージシャンのサイドを勤めたり、ギターインストラクターとしての活動が多かった。しかしここ数年ソロCDを発表する等、復活の動きが見えるのは嬉しい。
'97年、久々のアコギソロ作。彼はシンガーでもあるのでボーカル入りも2曲あるものの、実質的にはアコギインストアルバムで、収録曲の殆どが無伴奏のスティール弦ギターソロであるのが何より嬉しい。過去にはロックのヒットナンバーをカバーすることも多かった彼だが、この盤では全ての曲が自作であり、音楽家としての成熟も実感。ブリルビルディング・ミュージックがアコギ1本で表現されたらこんな感じだろうと言うような、都市的で良質な大人のギターミュージックとして推薦できる。これを機会に過去の TAKOMA からのアルバムも全てCD化されてくれるといいなぁ。