2005年11月20日
日本 1962 〜 ブルーズ スティール弦ギター フィンガーピッキング
日本人のブルーズメン・ギタリストと聞いて思い浮かぶ名前は何だろう? ファンキーなジャイブで唯一無二のパワーを誇る吾妻光良? Blind Blake ばりのリックと飄々した語り口のコンビネーションが絶妙な有山じゅんじ? アーチドトップからこぼれ落ちる枯れた音がタマらない内田勘太郎? それとも Stefan Grossman 直系のカントリーブルーズ伝道師・打田十紀夫? いやいや、もうひとり忘れちゃならないヘヴィな逸材が居る。東北出身のギタリスト・シンガー、田中まことだ。Son House さながらの豪快なギターと Charly Patton の如きダミ声は、一度聴いたらブルースファンのココロをガッチリ掴んで離さないだろう。ギターのみならず、ピアノやバンジョー、フィドルまでこなす才を持ちながらも器用貧乏に陥らずに、ブルース発祥の地・ミシシッピを中心にしたニューオーリンズ・スタイル(彼は憧れを込めて「パラダイス・ヴァレイ」と呼んでいる)に拘り続ける様がまた心憎い。日本でブルーズといえば関西という図式がいつの間にかあったが、田中まことの一途なプレイを聴いて東北人の粘っこさもまたブルーズと良い相性であったことが嬉しい(私は青森出身)。最近では首都圏ツアーや著名ミュージシャンとのセッションも行っているようだが、彼の立ち位置はこれからも変わらないと(勝手に)信じている。自宅のデスクトップで全ての音楽が手に入る便利さに首まで埋もれている自分ではあるけれど、「さて、明日は田中まことの唄を聴きに、仙台へいこうか」というようなミュージックライフを取り戻しても良いのじゃないかと思うよ。
'95年発表、ブルーズファンの正鵠を射抜いたデビューアルバムがリマスタリングされて再登場!! アルバムタイトルの元になったであろう Roy Brown のナンバーこそ無いものの、Willie Dixon や James Moore らの渋〜いナンバーが目白押し。カバーは全て英語で唄われていて、知らずに聴いたら黒人が唄っていると信じて疑わないだろう。様々なスタイルのナンバーが収められていて楽しいが、アコギ的に美味しいのは「I Got Love, If You Want It」や「Blues Everywhere」、ボーナストラックとして追加されたロバジョンの「Crossroad Blues」「Walking Blues」あたり。そして最終曲、オリジナルの内省的なギターインスト「Father's Road」が、「ブルーズ最高、ニューオーリンズ? 憧れだねぇ。けど日本人の俺が演るとしたらこんな感じになっちゃうんだよ」とでも言っているようで感慨深い。
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