2009年3月22日
日本 ロック スティール弦ギター 12弦ギター
日本のアコギストには、セッションプレイヤーを生業にする者も多い。数多くの現場で鍛えられた盤石の演奏力や適応能力でもって、いぶし銀のプレイを聴かせる、という構図がありがちだが、渡辺等はかれこれ30年もセッションプレイヤーを務めながらも、特異な創造力も併せ持つ規格外のアーティストだ。なにせ、天才・戸田誠司を中心にしたユニット Shi-Shonen (好きなバンドだったなぁ)に参加してデビュー、さらにリアルフィッシュ(これまた大好きだったよ...)や Abi というクリエイティブな集団を通過して来ているのだから。いちおうベースプレイヤーということになっているが、実はギターは勿論チェロやブズーキ、ウード等の様々な(ちょっと変わった)弦楽器を自在に弾きこなせる達人でもある。
極論するとミュージシャンには2種類あると思う。ひとつのジャンルに未も心も捧げて、その対価として深い歴史と奥義を得る者。または、荒れ野に一人立ちながら音楽ジャンルを体現するが如く己独自な音の世界を産み出してしまう者。言わずもがなだけど渡辺等がどちらに近い位置にいるのかは、リスナー皆さんの耳で確かめて欲しい。
'03年、12弦フレットレスギターという見た事もないような楽器をメインに、LAで著名ミュージシャンを巻き込んで録音されたアルバム。ひょっとしてゲンダイオンガクみたいにアナーキーで難解な音楽? という危惧は、ポロロンとウクレレみたいなサウンドで始まる愛らしいトップナンバー、「Portrait Of Summer」でかき消される。12弦フレットレスギターはウードか琵琶の響きのようで、Beatles の「Norwegian Wood」にステキに馴染む。カバーと言えば、New Order の「Bizzare Love Triangle」、Van Dike Parks の「Orange Crate Art」も取り上げていて、いっそうオモチャ箱っぽくアルバムを彩る。ビミョーにビザールだけど、あくまでポップ。何気なく「ほのエロ」なジャケットも含め、グーですよ!
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