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    アコギスト宣言!!

    Leslie West (レスリー ウェスト)

    2008年12月7日

    USA 1945-10-22 〜 ロック スティール弦ギター フラットピッキング

    プロフィール

    「ハードロック」という言葉は和製英語だと聞いたことがあるが、実際、ラウドで攻撃的なギターロックを指す表現として「ヘヴィメタル」が定着した現在、「ハードロック」は既に死語なのだろうか? 少なくとも筆者の中では、この二つには大きな隔たりがある。ロックが根源的に持つ雑多性や過剰性をそのままに、ヘヴィなサウンド指向を持った一群のロッカー達を一括りで呼ぶ為に生まれた苦し紛れの表現、「ハードロック」。さらに時代を経てハードロックが産み落とした、一種の様式や周辺カルチャー(悪魔とか背徳とか)に定住する一群を指す「ヘヴィメタル」、という具合だ。だから筆者には、White Snake やら Def Leppard やら Mötley Crüe はヘヴィメタルだけど、Cream や Led Zeppelin、Free、MC5 などは絶対ハードロックなのだ。そうそう、この Leslie West をギタリストに擁する Mountain も。
    Cream のプロデューサーとして名を馳せた Felix Pappalardi が、優れたギタリスト/ボーカリスト Leslie West に目を付けてメンバー編成を行い自らもベーシストに収まり、'70年にデビューしたのが Mountain である。だけど、Leslie West はハード一辺倒のギタリストではない。Mountain 以前に組んでいたグループ Vagrants はアートロック指向だったというし、Bob Dylan には多いに傾倒して後にトリビュートアルバムを作ったほどだ。彼がアコギを手に取った時、エキゾチックなコードワークを主体にして万華鏡のように怪しく変化する独特のサウンドは、インスト専業の凡百ギタリストが束になっても敵わない煌めきを持っている。

    アルバムレビュー

    Climbing!

    ロック名盤の誉れ高い、'70年の Mountain デビューアルバム。シンプルでキャッチーな「Mississippi Queen」はシングルとしてヒットし、映画にも使われるなどグループの定番チューンとなったし、「For Yasgur's Farm」はロックギター教科書のようなボーカルとギターのコール・アンド・レスポンスが情緒的なメロディと絶妙にマッチした名曲だ。
    そこで密かに注目すべきはアコギ・インストの「To My Friend」。ハードロックのアルバムにアコギインストが1曲だけ挟み込まれるのは、構成の定番として良く見られるが、その多くは1分前後の「中休み」的な位置づけだったりする。ところがこの「To My Friend」は3分半の無伴奏インストになっており、インプロヴィゼイションっぽくも起承転結がハッキリしており、他の「Mississippi Queen」や「For Yasgur's Farm」らヒット曲と同等の重みを与えられているのが分かる。変則チューニングによる異国風なドローン感を巧みに生かした緩急自在のコードワークは素晴らしく、ウードやシタールの独奏を聴いているようだ。安易にタブラ等をかぶせてしまったら安っぽくなったかも知れず、ギター一本で押し切ってしまったのが、またイイ。同時代の孤高のギタリスト Robbie Basho を想い起こさせ、Leslie West が腹だけじゃなく音楽的レンジも広いってことがよく分かる。
    後に Felix Pappalardi の意向により実験色が濃くなっていく Mountain だが、ここでは Leslie West のギター/ボーカルがしっかり核に据えられて、Pappalardi 一流の鉄壁サウンドワークによる仕上がりは言語を絶する素晴らしさだ。ロック史でまれに起こる、異なる才能同士や時代背景が相互作用したバンド・ケミストリーの一例である。

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