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    アコギスト宣言!!

    安田 守彦 (やすだ もりひこ)

    2006年8月20日

    日本 1963-1-28 〜 ニューエイジ スティール弦ギター 多弦ギター フィンガーピッキング

    プロフィール

    京都出身のソロギタープレイヤー。なんでも「弦の多い楽器が好き」だとかで、トレードマークのハープギターを筆頭に、マンドリンやチャランゴの音を連想させる複弦のティプルギターを縦横に操ってオーガニックなサウンドを醸し出す、個性的なアーティストだ。ハープギターといえば John Doan のようなケルト/アイリッシュミュージック系のプレイヤーの印象が強いが、優れた作曲家でもある安田守彦のカラーもまた、(やや和趣を加味した)アイリッシュトラッド風と言える。古くから吟遊詩人によって伝承されてきたこれらの音楽は、もともとギターでなくハープで演奏されたきたのだから、ハープギターとの相性が良いのは当然なのだろう。
    最近ではギターミュージックのプロデューサとして「Acoustic Breath」シリーズを放ち、またハイエンド手工ギターである内田ギターのエバンジェリストとして活躍する等、日本のアコギシーンへの貢献度は高い。

    アルバムレビュー

    風の歌が聞こえる

    '97年発表のデビュー作。デビュー作とはいえ、安田氏はそれまでに15年以上ギターを愛し弾き続けてきた訳で、この時点で個性はじゅうぶんに確立され、完成度も高い(この辺がアコギインディーズシーンの面白いところだが)。半数のナンバーがハープギターやティプルギターで弾かれているが、個人的には普通の6弦ギターで弾かれている楽曲の方がクオリティが高いように感じる。短いガリヤルド風の「あなたの涙がかわく前に」は、John Dowland の「流れよ我が涙」へのオマージュだろうか。アイリッシュっぽくなくてモダンかつドライな響きの「楽童」は、マイ・フェイバリットだ。このタイプの邦人プレイヤーでは共通項である「醤油臭さ」が安田氏には希薄で、ケルティック/アイリッシュ指向なギター音楽として世界に通用するスタンダードさを持っている。
    「織り上げた命」「手を引かれておばあちゃんの家へ」というタイトルが示すようにどの曲も穏やかでノスタルジックな、理想郷的な世界観で統一されている。この辺はある意味(日本人的な)美点かも知れないが、本来トラッドが持っていた欲望や嫉妬、厭世観などの人間のダークサイドも置き去りにして欲しくないなあ、と思ったりもする。とまれ、ギターを愛する人種としてリスペクトするに足る名盤と言えよう。

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