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    バーデン再来 - ファビアーノ・ド・ナシメントの衝撃

    2021年12月12日

    夏頃だったか、Spotify を散策していてファビアーノ・ド・ナシメント(Fabiano Do Nascimento)というブラジルのギタリスト兼作曲家によるアルバムがエラく刺さったのを思い出したので、今年のうちに、とばかりに改めて寸評してみる。

    Dança dos Tempo

    ナシメントは1983年生まれで、2015年にこの「ダンサ・ドス・テンポス(Dança dos Tempos)」でソロデビューしている。以降、これまでに延べ4枚のアルバムをリリースしており、今まさに脂が乗りきっているという感じだろうか。いずれもギター好きが狂喜乱舞しそうな名作揃いで、こんな傑物を見逃していたのを恥じ入るばかり。さて、なんだか'60年代 MBP ふうのジャケがイカすこいつを聴いてみよう。

    各所のレビューで彼のことを「バーデン直系」と呼んでいるが、なるほど納得できるテイストだ。コンテンポラリーなサウンド作りだってお手の物だろうに敢えてプリミティブな要素を色濃くすることで、サンバやフルクローレの土着性が匂い立つような艶めかしさを放っている。Track-1 のエルメート・パスコアール作「フォホー・ブラジル(Forró Brasil)」から、まさにバーデン全開。個人的には Track-9 の緊張感とグルーヴが堪らない。「サンバのリズムによるトッカータ」というラダメス・ニャターリ(Radamés Gnatalli)という作曲家によるクラシックギター曲がベースになっているらしく、ジャズ・現代クラシック・サンバが口の中で混ざり合って超絶ウマー!と叫びたくなる。Track-6 もクラシックギターでお馴染みの、ヴィラ・ロボスの練習曲だけど、ドラムスがビートを刻み始めてギターも音符のディケイを変え始めるとクラシック版では見られない表情が生まれる瞬間にゾクッと来る。最後の「トゥピ(Tupí)」は自身の作で、穏やかな「ビリンバウ」って感じの郷愁溢れるメロディが白眉。

    尚、女性ボーカルを迎えての Track-2 「エウェ(Ewe)」はクレジットが見当たらないけど、やはり自作曲なんだろうか。終始ミュートしたギターを伴奏に、サウダーヂ感満点なメロディにハイトーンボーカルが涼しげなこのナンバー、実は他のギター曲よりもズキュンと来てしまったことを白状するw 歌い手を少し調べてみたら、カナ・シマヌキ(邦人? 日系?)という LA のボサノヴァ歌手にたどり着いた。Spotify での再生回数もアルバム中ダントツで、さぞかしヒットしたんじゃないだろうか。誰かご存知でしたら教えて下さい。

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