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    アルバム紹介

    42年目のマークⅡ - マーク・オコナー 「マーコロジーⅡ」

    2021年11月16日

    とあるアコギ音楽サイトを回遊していて過去記事にマーク・オコナー(Mark O'Connor)の新譜ニュースを発見。「ふーん、またフィドルアルバムか映像関連作品とか?」と思い読み始めたその記事中のアルバムタイトルを見て我が目を疑った。「マーコロジーⅡ(Markology II)」だと…!? 記事の日付は今年の4月。そんな訳で旧聞に属する話だけど、自分にとってはビッグニュースなので記事にさせてもらう。

    Markology II

    マーク・オコナーは1961年生まれのブルーグラス・ミュージシャンで、所謂天才少年として十代の頃に華麗なるデビューを飾った人。およそ弦楽器なら何でもプレイできて特にフィドル・ギター・マンドリンは破格の腕前。そんな彼が18歳の時にリリースしたギターアルバム「マーコロジー(Markology)」は、デヴィッド・グリスマン、トニー・ライス、サム・ブッシュといった「ドーグ一派」の綺羅星プレイヤーを迎えてのブルーグラス・サミットのような凄いアルバムだった。

    ところがオコナーはその後数十年間、恐るべき質と量の作品を休み無く作り続ける一方で、何故かギターアルバムを録音することは無かった。(当然 agTunes も含めた)世界のギターファンの「ギターアルバムをもう一度」という願いが風化し始めた2021年、「マーコロジーⅡ」の突然のリリースはそんな時期だったのである。少ない情報をつなぎ合わせると、このアルバムは前年に死去したトニー・ライスの追悼の意を込めて自主制作プロジェクトとして進められたらしい。確かに全ての収録曲が共演者無しのソロ演奏という、シンプルなギターアルバムだ(1曲だけマンドチェロだけど)。前置きはこれくらいにして聴いて頂こう。

    どうだろう? 1曲目の「グリーン・スリーヴス」からエンジン全開である。誰もが知っているメロディの、音符と音符の間に詰め込まれた複雑で苦味のあるリックの数々は、もう十代の少年のそれじゃない(当たり前だけど)。2曲目「ゴーイン・ホーム」は、アパラチアンフォークを思わせるような泣けるメロディが素敵。5曲目「オン・トップ・オブ・ザ・ワールド」は42年前の「マーコロジー」にも収録していたトラッドなので、是非聴き比べて欲しい。7曲目「シェナンドー」は、意図は判らないけどマンドチェロでの演奏。8曲目「フレイリング」は「グリーン・スリーヴス」とタメを張る気合の入ったギタープレイで、このアルバムの白眉かも。9曲目「カマラ・ブギー」はラーガ・ブルーグラスという趣で、'70年代の空気感が香る。どの曲も何だかんだで手数が多かったけど、最後の10曲目「イーズ・ウィズ・ザ・ブリーズ」では少し寂しげにレイドバックして、アルバムは終わる。

    この40年余り、オコナーの非ギターアルバムに興味が無いでもなかったけど、こうしてガッツリとギターだけを纏めて聴くと、彼の変化と成熟、立ち位置がとても良く分かる。待った甲斐があったというか、生きてて良かったw 尚、これらの多くは「マーコロジー」同様に1945年製のマーチン D-28 ヘリンボーンが使われているとか。Spotify には「マーコロジー」もラインナップされているので、未だの方はこちらも聴いて頂ければと。

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