2006年1月9日
USA 1941-8-5 〜 1984-8-12 ジャズ/フュージョン ガットギター
伝説として今なお語り継がれる、夭逝の天才ジャズギタリスト。にもかかわらず、メインストリームのヒーロー・ジャズ・ギタリスト達(たとえば Jim Hall や John Scofield 等々)と彼を同列に語ろうとする時に感じる、若干の居心地の悪さは何だろう?
1941年にメーン州 Auburn で生まれ、7歳でギターを手に取り、12歳の時には Lone Pine and Betty's Travelling Band というカントリーバンドでリードギタリストを務めるまでになっていた。二十歳前後にバンドを離れ、ジャズに転向。カナダに移り暫くギタートリオで活躍した後、彼のギターヒーローであった Chet Atkins のプロデュースの元でメジャーレコードデビューを果たす。
Lenny Breau の独特なギタースタイルは、よく Bill Evans のピアノをギターで再現しようとしたものなどと評される。またハーモニクスを自在に織り込んだ美しいアルペジオ等の独特な奏法も特徴的だ。いずれにせよ、彼のルーツであるカントリーやヒルビリー側からジャズへのアプローチが、ジャズのレールの上を歩んできた一般のジャズギタリストから、彼を際立たせていることは間違い無い。ティーンの時に The Band 結成以前(直後?)の Rick Danko、Levon Helm とセッションをしていたり、ジャズ以外のファンにアピールする逸話に事欠かないもの彼らしい。非礼を承知で言えば、生涯を通じて精神障害と闘いながら執着的とも言える美しい演奏を残したことも、何者かに殺害されて未解決なままとなっている非業の最期ですら、Lenny Breau の実像の輪郭をあやふやにして伝説を補強している。
アーティストをジグソーパズルのように何かの枠に押し込めたがる評論家の手に余る、この規格外の天才は、音楽ファンから正当に認知されるまでのいま暫くの間、ふわふわと伝説の中を浮遊して行くだろう。
タイトルどおり、晩年のプライベートな演奏をレコード化したもの。演奏後に拍手が聞こえることから、ホームパーティか何かだったのかも。とてもくつろいだ雰囲気の中で次から次に繰り広げられる神業的なプレイが圧巻。希にして起こるこんな偶然の奇跡の記録は、ジャンルこそ違うが、ウクレレの鉄人 Herb Ohta のプライベートテープのレコード「Legendary Ukulele」を想い起こさせる。そして何よりも嬉しいのは、多くの曲がガットギターで演奏されていること。1曲目の「Blues For Corole」でスウィングしまっくて、「The Craw」で Jerry Reed の向こうを張ったかと思うと、「Cannonball Rag」で Merle Travis に恩返し。果ては「Flamenco」で Lenny 流フラメンコを披露して、「Stella By Starlight」を夢見るように儚く爪弾くのである。そしてラストのボーナストラック「Lenny's Radio」は大爆笑(ネタは聴いてのお楽しみ)。ギターの楽しさが目一杯詰め込まれていて、二枚組というボリュームなのに飽きることなど全く無い。番外編ながら、彼のルーツや指向がよく判る一枚としてお勧めできる。
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