2009年3月8日
イギリス 1975 〜 ケルティック/アイリッシュ ニューエイジ スティール弦ギター フィンガーピッキング
日本では何故か知名度が低いのだが、まずはこう言い切ってしまおう。Clive Carroll は今イギリスでもっとも期待されているアコースティック・ギタリストだ、と。
ミュージシャン一家に生まれて、よちよち歩きの頃から楽器を与えられた Clive Carroll は、トリニティ・カレッジのギターコンクールで優勝し、「アランフェス協奏曲」を録音する機会を得る程にギターの腕前を上達させる。と書くと、クラシックギタリストの経歴みたいだが、この後のサクセス・ストーリーが興味深い。その頃にとある舞台で John Renbourn と共演することになり、彼に大いに見込まれることになるのだ。その後、Renbourn のツアーにオープニング・アクトとして随行するにようになり、'00年には肝いりでソロ・レコーディングを果たし、あの Tommy Emmanuel にオーストラリアツアーに招待されて親交を結ぶかと思うと、米国で Ralph Towner や Vishwa Moham Bhatt といった著名ギタリストとコラボレートするわ、まさに前途洋々な Clive Carroll である。タッピング等をほとんど使わず、クラシックギターで鍛えたと思われる強靭な右手からバキバキ弾き出されるサウンドは、昨今の「ニューエイジ」なギターに馴らされた耳を醒してくれること請け合いである。
'04年、ギター一挺だけで録音された渾身のセカンドアルバム。アイリッシュなリズムが色濃いトップナンバー「March And The Messenger」を聴いただけで、このアーティストの実力は一目瞭然だ。まさに基礎体力が違う、という感じなのだ。ハンガリーのフォーク集団 Muzsikas (私も好きなバンドだ)に影響されて作ったという「Devil's Bridge」も Clive Carroll の作曲力がよく分かる奇想曲だし、「Luck For Sale」もステージのハイライトで弾かれたら総立ちになりそうなスリリングな変幻自在チューン。殆どのナンバーは自身によるオリジナルでイギリス人らしい意匠がベースだけど、最後に収められているトルコのクラシックギタリスト Gilbert Biberian 作の「Romantic」と、Wayne Shorter の「Black Nine」がまた、異彩を放っていて凄い。ギターでこの世の全ての喜怒哀楽をCD1枚に詰め込んだらこうなるのじゃないか、と思えるようなズッシリと重みのあるアルバムだ。
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