2008年2月17日
USA 1966-11-6 〜 ロック スティール弦ギター フィンガーピッキング フラットピッキング
ここ数年、Marty Friedman をはじめとして、やたら気さくな人当たりの良いキャラクターでお茶の間を和ませる、超親日メタル系ギタリストが何故か増殖中な訳だが、この Paul Gilbert もそんなひとり(奥さんも日本人だしね)。Racer X ではスウィープを多用した閃光のような速弾きで名を馳せ、Mr.Big ではそれに加えてポップな楽曲をガッチリ支えるバッキングの妙も見せてくれた、日本では特に人気の高いカリスマギタリストだ。
さて、ロートルロックリスナーの自分にとって最強のロックギター・インストアルバムは、ここ20年程ずっと Jeff Beck の「Guitar Shop」なのだが、その後に出た若いギターカリスマ達のインストアルバムを聴いてもそれが変わることは今のところ、やはり無い。この辺、おそらく Paul Gilbert に代表される世代のメタル系ギタリストの多くが、ブルーズを必ずしも底辺に据えていなかったり、マメにクラシックあたりを取り入れてみたりする妙な分別の良さとか、きちんと学校で習ったギターテクニックに支えられた超絶技巧が何やら画一的に聴こえてしまったりする、といった老人にありがちなジェネレーションギャップなんだろうが。
そんな訳で、個人的には、'90年代後半からソロ活動に比重を移した後の彼のほうが、コテコテ感が薄れて、代わりにある種の「枯れ」のような味が出始めて、面白いのじゃないかと思っている。
ファンが待望しつつもなかなか届けられなかったギターインストアルバムが、'06年に満を持してリリース。それというのも、「歌伴ギタリスト」を自認する Paul はずっとギターインストには興味が無かったそうな(そんな彼がこのアルバムの製作にとりかかるまでの逡巡が邦盤のライナーには書かれていて、笑える)。彼のキャリアが集大成された感じの、バラエティ豊かな15のナンバーがギッシリ詰まったこのアルバムだけど、たった2曲のアコギ・インストも見逃せないのだ。ふたつとも、アコースティックギターの特性を考え尽くした必然性を備えているからだ。ピアノとの二重奏「Marine Layer」は一聴するとセンチメンタルな小品だけど、アコギの妙に醒めた練習曲風のフレーズは何やらミニマル風でもあり、情緒に埋没することなく終止緊張感を保っている。Eddy Van Halen へのオマージュであろう無伴奏ギターの「Three E's For Edward」は、名曲「Spanish Fly」の向こうを張るパッセージの連続で(どーやって弾いてんの?)、静かな興奮が味わえる。ついでに、あの「ドリル奏法」もアコギで披露してくれたら最高だったのになー(笑)。
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