2008年12月28日
日本 1951-1-28 〜 ジャズ/フュージョン ガットギター フィンガーピッキング
「ジャズとは何か」という問いは、古いけれども時代を経る毎に切実さが深まるいっぽうではないのだろうか。この命題と常に真正面から取り組んでいるのが、ニューヨークと東京を股にかけて活躍する邦人ジャズギタリストの雄、伊東忍だ。
高校時代に Web Montgomery を聴き、それまで弾いてきたギターを本格的にジャズに転校させ、'75年の渡米以来ニューヨークと東京を股にかけて活躍している。こんにちジャズがより多くのシーンに拡散しながらそのぶん、発祥より受け継いできたスピリッツが希薄になりつつある現実は、メインストリームの空気を呼吸しながら日々を送ってる彼にとって誰よりも生々しい日常に違いない。2000年以降の、ガットギターをメインにした己の立ち位置を問い直すような新基軸には、そんな伊東忍の誠実さが見え隠れする。
ブルージーなフィーリングでは定評のあった伊東忍が、それまでイメージをかなぐり捨てるように'03年に発表した、ラテンギター・アルバム。タイトルのとおり、サンバ/ボサノバのカリスマ Baden Powell と、クラシックギターでも馴染みの深いベネズエラの大家 Antonio Lauro に捧げられてる。けれど、これは単なるトリビュートアルバムではない。この二人に加え、Ponce や Jobim といったバーチュオーソの作品を実に丁寧に奏でる一方で、加えられた4曲の自作曲では新しい試みが始まっている。それは飛翔の前の助走のようでもあり、聴く側の無責任な言い分としてはもっと暴れて欲しかったりもするのだが、ここでじっくり醸造された下地が中村誠一を迎えての次作「Serenata」や、スパニッシュギターアルバムの「Ramonada」に繋がっている。
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