2004年8月15日
イギリス 1952-11-12 〜 ニューエイジ ロック スティール弦ギター フィンガーピッキング
あの Paul McCartney のバンド Wings の末期にギタリストを務めたという輝かしい経歴を持つアコギスト、Laurence Juber はロンドン出身で、現在ではアメリカで活動中。13歳の時にはもうコーヒーハウス(イギリスのフォーククラブとして機能していたライブハウス)で演奏を行っていた。根っからのギター好きで、バンドで一旗上げるよりスタジオミュージシャンとして毎日ギターを弾く生活を夢見ていたという。そんな彼が、TVの仕事で顔見知りになった Wings のオリジナルメンバー Denny Laine からオーディションの誘いを受けたのは'78年のことだった。ご存知のように Wings は'80年には解散してしまうが、モンスターバンドのロックギタリストとしての濃密な時間は彼を、それまでとは違う方向性へ誘った。アコースティック・ソロ・ギタリスト、Laurence Juber の誕生である。この時期は Michael Hedges を中心とした新しいアコースティック・ムーブメントの胎動と一致しており、当然 Juber も斬新な奏法やイレギュラーチューニングを取り入れつつ、個性を育んでいった。'90年にはアコギソロのアルバムを発表し、今日に至る。
'00年発表の、ビートルズカバーアルバム。勿論、Juber のアコギ一本によるギターインストアルバムである。アコギのビートルズカバーというのは Steven King のシリーズを筆頭に結構あるのだが、この人が弾くビートルズナンバーは訳が違う。なんといっても Paul の傍らでギターを弾きながら世界を回ったミュージシャンなのだ。「帝王」ポール様のことだから、ナンバーによっては細かい注文がついたこともあっただろう(勝手な想像だけど^^)。そんな作曲者の体臭が染みついたようなアコギカバーを期待しつつ、CDを聴いてみた。
当然のように14曲中、半数以上が Paul のナンバーで、どの曲も過度なアレンジを施すことなく原曲のキモを損なわないプレイが心地よい。「I Saw Her Standing There」のベースライン然り、「Martha My Dear」のオリジナルイメージ(ギターのスリーフィンガー奏法をピアノに置き換えて作曲したと言われている)を彷彿とさせるギターワーク然り、である。最後の「Can't Buy Me Love」だけは「御免してヤンチャさせてもらいます、ポール様」って感じで思い入れたっぷりのブルースチューンに改造してあって、個人的にはこれが面白かった。どのナンバーもリズムよりメロディやハーモニーを優先させた、これまた Paul 譲りのような方向性が楽しめる。それにしても半数以上の曲が DADGAD で弾かれていたのは、ちょっと意外。
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