2010年5月30日
USA 1949-5-14 〜 ニューエイジ フォーク スティール弦ギター フィンガーピッキング 女性ギタリスト
'70年の米ヒッピーカルチャー華やかなりし頃に出版された『Living On The Earth (地球の上に生きる)』という本が、エコブームの煽りを受けてか今また静かに人気を集めているらしい。中身はというと、別に抹香臭い東洋思想や神秘主義を語る訳じゃなく、衣食住から出産までの生活の基本を現代文明と距離をおいて実践するノウハウが記された、田舎暮らし入門みたいなものらしい(読んでいないので)。著者の Alicia Bay Laurel は、カリフォルニアで医師の父と彫刻家の母というハイソな家庭に生まれた、幼い頃からアーティスト志向な女性だったようだ。長じては音楽を学び、特に John Fahey からオープンチューニングのアコースティックギター即興を学んだという。他にも絵画や文筆、写真等オールマイティなタレントを発揮し、前述の著作は40年を経た今なおロングセラーを続けている。'74年にマウイ島に移住し、著作を実践するような生活のなかで現在もアーティストを営んでいる。
Alicia Bay Laurel が2000年に著書『Living On The Earth』を改訂した際に録音された、言わば『地球の上に生きる・サウンドトラック』だ。ギターと声だけという、彼女のライフスタイルをそのまま切り取ったような形式だが、アコギミュージック界隈では珍しいことでもないし、その辺の思想的背景は脇に置いておこう。特筆すべきは音楽性の骨太さと幅広さだ。Fahey の愛弟子らしいし、Robbie Basho のように現実感から遊離したテイストが充満してるんじゃないの、なんて思っていたら、トップナンバー「In The Morning」を聴いて良い意味で拍子抜けした。まるでアイルランド民謡じゃないか。続く「Chard And Chives」は、まるで Mississippi John Hurt がハワイアンバンプを織り交ぜながらニコニコ弾き語っているような、ハワイアン調カントリーブルーズといった感じ。「Nineteen Sixty-Six」は少し陰のあるジャジーなつぶやきが、Rickie Lee Jones みたいでクール。「Vai Raga」だけはタイトルどおりというか、私の先入観に近い東洋趣味がご愛嬌。17曲中、「Waterwheel」と「Sky Blues」がアコギインストだが、いずれもシンプルな爪弾きながら工夫が凝らされていて、特に前者は聴きごたえがある。
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