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    アコギスト宣言!!

    Peter Moon (ピーター ムーン)

    2009年8月2日

    USA 1944-8-25 〜 ハワイアン スティール弦ギター フィンガーピッキング スラックキー

    プロフィール

    某電気メーカーCMでお馴染みの「この木何の木」が、オアフ島のモアナルア公園にある樹齢130年の大樹であることは、多くの方がご存知かと思う。この樹に例えていうなら、太い幹にあたるのがスラックキー・ギターの始祖 Gabby Pahinui であり、さしずめ Peter Moon は青々しく傘のように広がって繁る枝葉のようである。
    学生時代から作曲や楽器演奏にのめり込んでいた Peter Moon だったが、とりわけ Gabby Pahinui から深いインスピレーションを得た彼は、そのまま Gabby の付き人に収まってしまった。そして間もなく、Gabby の次男 Cyril Pahinui とベーシストの Alfred "Baby" Kalima らと、グループ Sunday Manoa を結成。シンガー Palani Vaughn と共演するかたちで'67年にデビューを飾っている。以降、Peter を中心に目まぐるしくメンバーチェンジを重ねながら'70年代中盤まで活躍した Sunday Manoa は、ハワイアン・コンテンポラリー・ミュージックの基盤を完全整備してしまったと言える。現在でもハワイアン音楽シーンで活躍するユニットの大半が、Sunday Manoa ライクな編成をとっていることからも、その尋常ならぬ影響力が伺えるだろう。'80年頃からは、Peter Moon Band やソロでコンスタンスに活動を続けている Peter だが、ミュージシャンとしてのトータルな器の大きさのせいだろうか、ギタリストやウクレレプレイヤーとしての凄さがクローズアップされることが不思議に少ない。例えに戻るが、Peter Moon はジャンルを問わず音楽リスナーが身を休めることのできる、庇のような青い繁みだ。我々はもっと、このハワイアン音楽の大樹を経験する必要がある。

    アルバムレビュー

    Hawaiian Time

    '68年、メンバーが Cyril Pahinui から、同じく Gabby の長男である Bla Pahinui に変わってリリースされた Sunday Manoa のセカンド作。Peter Moon の魅力は、なかなか言葉にするのが難しいのだが、身も蓋もなく言い切ってしまえば「センスが良い」ことに尽きるのではないだろうか。Gabby がハワイ人のアイデンティティを凝縮して造り上げた土壌の上に、Peter は独自のモダンな感覚をふんだんに振りまいてコンテンポラリーなサウンドを築いている。といっても、楽器を電化したとかロックを取り入れたなんてチャチなレベルではない。むしろ、外見的には従来通りの形態(コーラス+ギター・ベース・ウクレレ等)のままで、それまでとはガラリと変わったアーバンで風通しの良い音にしてしまった訳だ。どこがそうだ、と言われると再び困ってしまうけど、ちょっとしたパッセージやコード進行の捻りなどの隅々にまで神が宿っている、しか言いようがない。このアルバムで言えば、それは、「Uwe Ka Wao」や「Kapalaoa」のような自作のナンバーで顕著だ。アコギ的には、後々でもトレードマーク的に弾いている定番インスト「Maori Brown Eyes」のファースト・バージョンが収められているし、「Akaka Falls」や「Waipi'o」らウクレレソロ・ナンバーも素敵で、弦楽器プレイヤーとしての卓越した技量も堪能できる。
    これ以降、彼独特の「センスの良さ」は、他者が追随できないレベルで今に続いている。手練た感じの近年の作も魅力だけど、この頃の瑞々しさだけは本人 Peter Moon でも再現できなかった訳だよなぁ。てな訳で、一押しの「幻の名盤」です。40年を経て世界初 CD 化を実現してくれた、オーマガトキレーベルさんにも、拍手。

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