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    アコギスト宣言!!

    Kurt Rodarmer (カート ラダーマー)

    2004年12月5日

    USA 1961 〜 クラシック ガットギター フィンガーピッキング

    プロフィール

    米ミシガン出身のクラシック・ギタリスト。6歳でギターを始め、11歳にして初リサイタルを開く。その後も幾多のギターレッスンで研鑽を続け、二十歳から5年間の間、晩年の Andres Segovia から個人教授を受けている。'85年に Ponce、Rodrigo らスペイン・南米作曲家の作品を集めたレコードデビューを果たすが、その約10年後に発表したアルバムが独自に編曲を行った J.S Bach の「ゴールドベルク変奏曲」であり、これが大きな反響を呼んだ。その表現手法が、クラシック界(いや、ジャズなんかもそうかな)では禁忌とされる、一人多重録音で成されたものだったからだ。しかし、ギターという楽器に拘泥して不完全燃焼の表現に甘んじるよりは、憧れに憧れたバッハの金字塔を思い残すことなく弾ききっててみたいとう欲求を優先させた、ある種の潔さ故だろうか。John McLaughlin のような異ジャンルのアーティストからも賛辞をもって受け止められている。

    アルバムレビュー

    The Goldberg Variations

    '98年、Glenn Gould ファンだった父親のアイディアがきっかけで実現した、ギター多重録音による意欲作。この制作にあたって Kurt Rodarmer は、この Gould の演奏によって神格化された作品のギター移植について、相当悩んだという。優れたギタリストの多くが、「J.S Bach の作品は音符の一つ一つが非常な重みを持つが故に、和声の省略や回転を余儀なくされるギター編曲においてとても神経を使う」と述べているが、Kurt Rodarmer の場合はその問題を乗り越える為に、4つのパートに分けて二挺のギターで演奏するという思い切った決断に出た訳だ。それも、この曲の為にギターおよび弦を特注して音域はもちろん音色にまで細心の注意を払うという徹底ぶりだ。
    これまで安易な多重録音によるクラシック編曲のギター演奏を聴いた経験もあり、いささか懐疑的な気持ちでCDをスタートさせた。冒頭のアリアは鍵盤楽器っぽい演奏なのに弦のビブラートが違和感を感じさせたが、変奏が繰り広げられ楽曲の生命力が高まり始めると、そんなことは全く気にならなくなり厚みある和音と躍動感あふれる演奏に精神が高揚してくる。そう、この曲の持ち味である世俗っぽさというか素朴な快活さが、鍵盤楽器より表情をつけられる弦楽器により適しているんじゃないかと思えてくるぐらいだ(逆に無伴奏バイオリンソナタあたりだと楽曲がやたら荘厳なこともあり、逆立ちしてもバイオリンには勝てないなぁって痛感するのだけど)。特注ギターによる低音はテオルボ(ギター族の低音用古楽器)を連想させ、少しレガシイな気分も味わえる。歴史的名演の類とは違うと思うが、私はこの試みを本心から肯定し賛辞する。しかし、それは手法にではなく、そこに至った Kurt Rodarmer の楽曲に寄せる愛情と献身的な努力に対してのものだ。
    この編曲、Los Angels Guitar Quartet の様なハイテク集団がステージで取り上げてみてくれないかなぁ。ちなみにこの特注ギター、かつて Gibson から伝説のMKシリーズを送り出し、従来の手法に依らないエポックメイキングな作品を生み出した孤高のルシアー、故 Richard Schneider の手によるものである。

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