2006年7月31日
日本 1959 〜 ジャズ/フュージョン ガットギター
日本の Tuck & Patti と形容とされることも多い、女性ボーカリスト Shiho とのジャズユニット Fried Pride のギタリスト。女性ボーカルと男性ギタリストのコンビは Tuck & Patti の専売特許では無く、特別珍しいものではない。それにしてもこの形態、ユニットしては最小構成だし、ましてや伴奏するのはギターというありふれた楽器なのに、いつも胸がときめいてしまうのは何故だろう。俳句のように限られたスペースの中で無限の彩りを奏でくれることへの期待か。アーティストそれぞれの姿がよりくっきり見えて、さらにそれらがぶつかり合い、寄り添い合う様が愛おしいからか。それとも単に私がギター好きだからか(^^;)。たぶん全部だろうが、モノクロームの背景に深紅の花が灯っている写真のような官能的な音世界を構築した Tuck & Patti は、とりわけこのユニットの長所を上手く生かすことに成功したアーティストである。それに対して、Fried Pride は貪欲に様々なものを付け加えて行きながら可能性を追求しようとしているようだ。そして、そのコンセプトを打ち出しているのがこの、横田明紀男という卓越した才能のギタリスト。「老け込むには早いよ、まだまだガンガンいくぜ」と言っているような横田明紀男の「過剰さ」は、しっとりお洒落路線が鼻につく昨今のジャズシーンでは、頼もしく気持ちよい。
横田明紀男は'86年に初リーダーアルバムを出しているが、Fried Pride を結成して以降、やはり全編アコギを用いての初ソロアルバムがこの'04年の「Double Face」。Bob Dylan や Beatles といった、カバーの素材が幅広いのも Fried Pride 路線のまま。彼はまさにフュージョン真っ盛りの頃にギタリストとしてアイデンティティを確立した訳だが、このアルバムではそんな立ち位置がよく分かる。ガットギターという穏やかな音が連想される楽器を使っていても、サウンド的には硬質でハイテンションだ。Jeff Beck を敬愛するという彼だし、ひょっとしてアコギ版「Blow By Blow」を作りたかったのかなぁ。Beatles カバーが一曲入っているあたりも同じだし、などと穿ってみたりする。3曲目のアルバムタイトル曲(オリジナル)は疾走感があってカッコ良いし、ガットのオクターブ奏法がたっぷり聴ける Wes の「4 on 6」もステキだ。
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