2006年4月16日
ノルウェー 1970-7-14 〜 ジャズ/フュージョン
ここ数年、素晴らしいギタリストを多数輩出している北欧ジャズシーンから、また一人注目すべきギタリストが。ノルウェーの Jacob Young である。両親は音楽好きで、母親からはノルウェー民謡やジャズを、アメリカ人の父からはモータウンミュージックをそれぞれ影響されて楽しむようになる。ギターを手にしたのは12歳の時。友人から影響を受けて、ブルースやロックを弾き始める。成長してオスロで音楽を学び始めるが、じきに理論や音楽史を重視する授業に飽き足らなくなり、奨学金を得てニューヨークに留学(本当の動機は、その頃好きだった女性を追いかけてとのことだが^^;)。彼の地で Jim Hall や John Abercrombie に師事し、'90年代中ごろまでフリーランスのギタリストして演奏活動を重ねて実力を積み上げて行く。その後はノルウェイに帰国して、アルバム制作等、活動を本格化させている。アコースティックとエレクトリックを実に自然に使い分ける彼のギタープレイは、繊細で優美と言うに尽きる。ECM 系ミュージシャンのイメージにあるような内省性や先鋭度のかわりに、彼には素朴な唄心と、フォーキーな主題をクールなモダンミュージックに昇華させるセンスがある。とりわけ日本人の感性には親しみやすいのではないかと思える。女性も是非聴いてみて。
'04年、ECM からのリーダーアルバム。管を2本配した彼のクインテットが奏でるオリジナルナンバー9曲のイメージを、ソフトフォーカスなジャケットが雄弁に伝えている。アコギで始まり、アコギで終わる構成になっているが、トップナンバーの「Blue」が兎に角良い。胸を締め付けるような切ないテーマをギターが爪弾きだす。次第に寄り添ってくるトランペットとバスクラリネット。昂まりに耐えかねたようにトランペットがひとしきり胸の内を吐き出すと、それに答えるかのように振幅を増していくギター。そして最後に優美なテーマに収束して行く様の美しいことといったら。8曲目「The Promise」は、ホーン抜きでベースとギターが自在に交差しながら明滅する光みたいに浮遊している。他にも Jim Hall を彷彿とさせるエレクトリックのナンバー等、聴き処は多い。派手に弾かなくても音楽の色彩を左右し、染め上げてしまうギターの好例である。
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