2005年12月25日
USA 1963 〜 ジプシースウィング ジャズ/フュージョン スティール弦ギター フラットピッキング
近年、急成長によってテキサス第2の都市となったオースティン市は、古くからカントリーやブルーズが盛んで、たくさんのライブハウスや年間を通してのミュージックフェスティバル等が有名。歴史あるニューオーリンズあたりとはまた違った魅力に溢れた街で、音楽好きには新しいメッカになりつつある。ここから生まれたあるジャグバンドが世界中で人気を博した。老境のクラリネット吹きとパンキッシュな若者達の混成が発するエネルギーとノスタルジー、Asylum Street Spunkers である。長い前置きになったが、Spunkers のサポートギタリストとして並々ならぬ腕前を世間に知らしめたのが、この Dave Biller である。
祖父がジャズギタリストで父親もジャズ好きという環境で生まれ育った彼は、予め決められていた如く少年時代からギターを弾き始める。そしてロックギターからブルース、ジャズへの変遷を経ていくのもこれまたギタリスト出世コースだ。長らくパートタイムミュージシャンとして音楽に携わってきたが、前述の Asylum Street Spunkers 人脈との交わりから遅咲きの大輪を咲かせることとなる。Dave Biller の最大のギターヒーローは Django Reinhardt とのことだが、彼が長年培ってきたアメリカンルーツミュージックの蓄積がホットクラブサウンドとして噴き出す様は、ヨーロッパのロマ・ギタリスト達とはまた違った楽しみがある。この手の、アメリカンルーツミュージックとヨーロッパジャズ(ホットクラブサウンド)が融合した音楽が近年、「グッドタイム・ミュージック」と名付けられてパッケージングされることにより、我々の耳に届けられるようになったのは有り難い。Dawg Meets Texs Jazz って感じのジャズ・グラッサー Slim Richey、これまた Django に魅せられた名カントリーギタリスト John Jorgenson、そして Dave Biller は、グッドタイム・ミュージック・ギタリストの必須課題として押さえておきたい。
'03年、40歳でのメジャー・ソロ・デビュー盤。2名のリズムギターとウッドベース、それにクラリネットという Django の後期スタイルを模した編成による、ホットクラブ・トリビュート。クラリネットは Spunkers の Stanley Smith かと思いきや、リズム隊も含めて全員が自分のユニットのメンバーらしい。Django ナンバーやスタンダード、オリジナル作で構成された13曲(もちろん全てインスト)からは、あまり「張り切っていない」というかアットホームでくつろいだ雰囲気が伝わってきてグッド。突然身近な話になってしまうが、筆者の周りにもいつレコードを出してもおかしくない力量を備えた、グッドタイムミュージック系プレイヤーが沢山居る。Dave Biller みたいに、いつか彼らの音楽への想いがかたちになってアナタの耳に届けられるといいのにな。