2005年4月11日
イギリス 1948 〜 ロック スティール弦ギター フィンガーピッキング
本国イギリスでは、Bert Jansch 直系のアコースティックギタリストの大御所として古くから認知が行き渡っているのに、日本では不思議に知名度が低いのがこの Gordon Giltrap。それは、彼のルーツ Bert Jansche に日本人が抱く、枯れたストイックなイメージから Gordon Giltrap の持つ大仰なドラマチックな特性が大きくかけ離れているからかも知れない。しかしながら、少年の頃の Giltrap がアイドルにしていたアーティストには Jancsh や Renbourn と並んで Shadows の Hank Marvin や Beatles、The Who らが居たことを見落としてはいけない。つまり根っからのロック好きで、かつロックが最も激しく変化した時代に居合わせた彼が、繊細で内向的なアコギをプログレッシブロック的なドラマチックなサウンドと掛け合わせることを繰り返すのは自然の成り行きだったということだ。一種、オランダのプログレギタリスト Jan Akkerman とも通じるところがあり、精緻でクラシカルな構築美を好む向きにはお勧めだろう。
'00年、タイトルから伺えるように彼のアイドル Bert Jansch への敬意を表しつつ自らのルーツを辿ったかのようなアコギ(ミニ)アルバム。アルバムタイトルに直結している2曲目「Angie」に大きな思い入れを持つギターファンは多いだろう。言わずと知れた Davey Graham 作のフォークブルース形式であるこのアコギインストナンバーは、Jansch が無骨な情念溢れる演奏、Paul Simon が彼一流の知的で滑らかなアレンジでもってカバーし、フォーク世代のアコギインストとして金字塔的な一曲。今のようにアコギインストが次々とリリースされる時代ではなかったものの、ブルースやジャズ、ブルーグラスシーンに目を転じれば、凄いアコギインストは他にもあった筈である。しかし「Angie」は、それらの太い根を持つトラディショナルな系譜から断ち切られたデラシネ的な音世界を持っていた。私を含めた(ちょっと古めの)ギターファンが四半世紀をこえた今でも、この曲に特別な想いを抱いてしまうのはそんな要因もなるのかな、と考えてしまう。さて、Giltrap 弾くところの「Angie」は要所要所にギターをオーバーダブした、彼独特のアプローチが試みられたもので興味深くはあるが感銘を得るまでには至らなかった。むしろ聴きものはやはり Jansch が愛奏した「Chambertin」や「Blackwater Side」かと。有り余るテクニックを控えめに淡々と、しかし慈しむように弾かれる無伴奏ソロが心に染みる。
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