2004年7月19日
ブラジル サンバ/ショーロ ガットギター フィンガーピッキング
若手ショーロ・トリオの Trio Madeira Brasil で低音リズムを司る7弦ギタリスト。同グループには、最近注目を集めるギタリスト Ze Paulo Becker が居る(こちらは普通の6弦)。Goncalves は同じく7弦ギターの大家 Dino 7 Cordes やクラシックギタリストの Turibio Santos に師事したそうである。
ブラジル最古のポピュラーミュージックとして、そしてそれ故に年配者の好む音楽としてのイメージが強かったショーロではあるが、最近は多種多様なブラジル音楽の交配場として機能するようになって来ている気がする。つまり、歴史と確固とした様式を持ちながら即興こそが大きな魅力となっているショーロが、その懐の深さという真価を発揮している訳だ。そんな異種格闘技的な側面を持ち得るショーロだからこそ、メインとして用いられる撥弦楽器であるバンドリンやヴィオラ(ガットギター)のプレイヤーにしても、テクニックが確かなのは当たり前。夭折した天才 Raphael Rabello は記憶に新しいが、そんな他ジャンルの音楽要素を取り入れて一筋縄ではいかぬ演奏をするスーパープレイヤーが続々と育ちつつある。
'98年、グループ名をアルバムタイトルにしたデビュー作。このアルバムは、'99 Sharp Awards でベスト・レコードに選ばれている。明るく良く唄う Jacques Carrier のバンドリン、そしてその向こうを張るソロを聴かせる Paulo Becker のギター。だけど、どっしりとしていて変幻自在なリズムでグルーヴを与えている Marcello Goncalves の7弦ギターこそが、このユニットの主導権を握っているように聴こえるのは、私の贔屓目のせいか(録音も7弦の方が良い音で録れているし)? 収録曲も、スタンダードな Jacob de Bandolim や Ernesto Nazareth らのナンバーに加えて、クラシックギターでもよく採り上げられる Falla の「はかなき人生〜舞曲」や Scott Joplin のラグタイム「The Easy Winners」等を交え、華やかで楽しい。ショーロ独特のちょっとくすんだ哀愁はどこかに行ってしまったようだが、個人的には歓迎。Egberto Gismonti の「Loro」がとてもカッコ良いのだが、リードギターの代わりに鳴っているシタールのような楽器は何だろう?