2004年2月14日
スペイン 1947-12-21 〜 2014-2-25 フラメンコ ガットギター フィンガーピッキング
フラメンコ・ギターにはこれまで三度の大きな変革があった。まずは Niño Ricardo によって、「歌伴」だったギターにソロ・パフォーマンスの境地が拓かれたこと。そして Sabicas は、それにふくよかで人懐っこい旋律と解りやすい起承転結を加えて一般聴衆向けのコンサート・ピースという広がりを持たせた。そしてこの人、Paco de Licia が打ち立てた功績は説明するまでもないだろう。
Al Dimeola や Chick Corea といった異ジャンルの強者達との異種格闘技戦はその最もハデないち側面だが、逆説的に言えば彼がそういう立ち振舞を重ねれば重ねるほど我々は Paco de Licia がまさに純粋なフラメンコ・ギタリストであることを思い知らされるのである。生まれながらにとり憑いたフラメンコの魔性「デュエンデ」が Paco 本人のみならず、彼と交わる者全てを虜にしていったのだろうか。たった66年で生を燃焼しつくした彼の生涯に、そんな思いと嘆息を禁じ得ない。
Paco のようなタイプのアーティストは常に最新アルバムが最高傑作だ、と誰かが言っていた。まったく同感である。スーパーギタリスト達との火花散るつばぜり合い。クラシックの大作の大胆なインポート。かと思えば考えられない程の正攻法でギターコンチェルトに挑んだりと、彼の一挙一動に心はいつも奪われっ放しだった。しかしそう言いながらも、はじめて私を Paco に出会わせてくれた「二筋の川」と邦題が付けられたこの作品を推す。エレクトリックベースとラテンパーカッションを導入したニュータイプのルンバ「Entre dos Aguas」がトップに収められたこの'73年のアルバムは、Paco を世界のスターダムに押し上げ、同曲は現在でもステージングでのハイライトになっている。これ以降の Paco の快進撃はご存知のとおり。
尚、写真のジャケットは'80年頃にフォノグラムから国内リイシュー(勿論アナログ盤)されていた一連のシリーズのデザインで、本国スペインのジャケットとは違うが見事なデザインワークである。
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