2009年11月3日
USA 1979-6-8 〜 ジャズ/フュージョン ブルーズ ロック スティール弦ギター フィンガーピッキング
Derek Trucks。なんというオーラな響きを纏った名前だろうか。叔父があの The Allman Brothers Band のドラマーだった Butch Trucks であること、そしてそのバンドの看板ギタリスト Duane Allman が「いとしのレイラ」の録音の為に一時的に 『Derek』 & the Dominos に参加したこと。このたった二つのフェイマスヒストリーを知っているだけで、年代物のバーボンのような Derek Trucks のスライドギターの響きをCDプレイヤーのスタートボタンを押す前にイメージできてしまうなんて、ロックの魔法にかかってしまったみたいだ。
実際、この柔和な顔つきの白人ギタリストから放たれるサウンドは期待を裏切らないどころか、全てのリスナーの想像を越えている。芳醇なサザンロック風味のブルーズ・フィーリングに加えて、ラテンやラーガが自然にミクスチャーされたハイブリッドぶりも21世紀型といったところか。その超越した音楽性とギターテクニックを持て余している訳でもないだろうが、なんだか現時点での Derek Trucks はのべつ幕無しに大砲を打ちまくっているような印象を受けなくもない。この天才ギタリストが「天命」のようなものを悟った時に、どんな第二章が開けるのかは想像するだに空恐ろしい。
新生 Allman Brothers Band と、自身のバンドである Derek Trucks Band の二足の草鞋で活動している Derek だが、このアルバムは後者名義のでセカンドで、'98年の作。日本の天才ギタリスト Char がそうであるように、Derek もまたその才気がロックという枠を自然に越えてしまうのだろう。アルバムによってフュージョンっぽかったり、Zappa のようなコンテンポラリー指向だったり方向性が結構バラけているのだが、本作はそんな中で最もロック寄りなアルバムであり、多くのリスナーが期待するサウンドではなかろうか。特にゲストギタリスト Warren Haynes と丁々発止を繰り広げる「Young Funk」や「Kickin' Back」らのヘヴィなインストナンバーは悶絶モノだ。さてアコギはと言えば、Derek の場合当然ドブロということになる。8曲目の「Death Letter」はボーカル入りだけど、なんと言っても Son House ナンバーなだけに、ディープなデルタのフィーリングを Haynes との掛け合いドブロで楽しめる。そしてラストナンバーの「Deltaraga」は Derek の無伴奏ソロ・インスト。曲名から想像する程、抹香臭くもなく、訥々としたカントリーブルーズだ。それでも、ちょっと Johy Fahey あるいは Robbie Basho 風味などんよりとた重量感が、一筋縄じゃいかない Derek らしくてイイなぁ。
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