2008年5月4日
イギリス 1939-4-23 〜 ブリティッシュ・フォーク/ブルーズ ロック スティール弦ギター フィンガーピッキング 変則チューニング
'60年前後のイギリスは、Big Bill Broonzy や Muddy Waters といった本場ブルーズの大物が度々ツアーで訪れており、ブラック・ミュージックが若者のあいだに熱病のようにじわじわと伝染していく、ロック誕生前夜の重要な時期にあった。ブルーズやジャズをイギリス流にミクスチャーした「スキッフル」のブームから The Beatles が生まれ、さらにもっとピュアなブルーズを追い求めた若者達から John Mayall や Eric Clapton、Peter Green らブリティッシュ・ロックの重鎮が輩出されたのはご存知のとおり。その一方で、地産の伝統フォークとブルーズを融合させていく一派も生まれ、Pentangle や Fairport Convention に代表されるトラッド・ロックとも言える流れに繋がっていく訳だが、この Wizz Jones もそんな変革期の真っただ中に身をおいた一人である。当初はバンジョー弾きの Pete Stanley とのコンビでブルーグラス・ライクな音楽をやっていたが、'68年のソロデビューアルバム以降はトラッドとブルーズが絶妙にブレンドされた独自のアコースティック・ミュージックのスタンスにブレは無い。Davy Graham 譲りとも言える、オープンチューニングを織り交ぜたフィンガーピッキングの腕前はピカいちだし、Ralph McTell を思わせる柔らかで滋味深い歌声も魅力的だ。'80年代は音信不通状態だったが、'90年以降にまた活動が活発になってきている。ブリティッシュフォーク・ブルーズをひもとく時、Bert Jansch や John Renbourn らの「必修科目」を済ませたら、次にコミットすべき重要ギタリストだ。
'73年発表のソロ4作目で、弾き語りを中心としたシンプルながらも佳曲が詰まった好盤。カントリーブルーズ調なオリジナル作のトップナンバー「Living Alone」に始まり、Woodie Gathrie のナンバーをブリティッシュトラッド風にアレンジした「Pastures of Plenty」、The Incredible String Band の Robin Williamson 作の「First Girl I Loved」もオリジナルを聴いたことが無いのだが何やら Bruce Cockburn を連想させる静かなビートを含んだ個性的なフォーク・ナンバーだ。ラストナンバーの「Freudian Slip」には Bert Jansch がギターで参加しているが、このオリジナルナンバーも軽快ながら苦みばしった筆者好みの曲である。
なお、CDリイシューのボーナストラックには「Guitar Shuffle」なる Big Bill Broonzy 作のアコギインストが収録されている。
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