2010年4月4日
スペイン 1942-6-1 ~ フラメンコ ガットギター フィンガーピッキング
Paco de Lucia の大成功以来、ソリスト・スタイルのフラメンコギタリストは珍しいものでは全くなくなった。だが、ご存知のように、このスタイルは Paco の専売特許ではなく、 Paco 以前から多くの優れたギタリストがフラメンコギターの新しい境地を求めて、苦闘をくりひろげてきた軌跡なのである。その中でも、一般にも分かりやすい大衆娯楽的なフラメンコギターの流儀を確立した名手 Sabicas と、一方でややアカデミックなアプローチで「フラメンコギターの世界基準」を築き上げた、この Paco Peña こそは、こんにちのフラメンコギターの隆盛を築いたニ傑として忘れてはならない。
Paco Peña は Paco de Lucia より5歳ほど年上だが、そのぶん始動も早く、すぐにロンドンに移り住んで、'67年には初のソロ・コンサートで鮮烈な世界デビューを飾っている。ソロギタリストとしての評価を固めるいっぽう、彼自身が選りすぐったダンサーとの舞台を創り上げる等、ワールドワイドなフラメンコの普及に尽力してきた。また、クラシックギタリストの John Williams や、フォルクローレギタリストの Eduardo Falú らとの交流も、彼のしなやかで高雅なフラメンコスタイルを彩り豊かにしている。
'67年に彼がデビューコンサートを行った、ロンドンはウィグモア・ホール。この古巣で'06年に行われたライブを収めた、感涙もののアルバムだ。早くから世界の表舞台で活躍してきた Paco Peña なので、'70年代あたりの若い頃の彼の勇姿も YouTube 等で簡単に探すことができるのだが、それと聴き比べて40年を経た現在の Paco の芳醇さといったら、どうだろう。これ見よがしなショーアップは皆無だが、かといって枯れきってしまった訳でもなく、ジャズ等との交配でたどり着いた現代型フラメンコのエッセンスも適度に取り入れながら、よりしなやかに強靭になっている。
アンダルシアのジプシーの間で生まれた土着芸能・フラメンコを、世界の聴衆に届ける為に Paco Peña が置き去りにしてきたものが無い訳ではないだろう。コンサートホールではなくタブラオこそがフラメンコのステージだ、というこだわりだって十分に分かる。それでも、人生の大半をかけて積み上げてきた一人の男が放つ、このアルバムで聴けるギターには、どう探したって嘘は無い。私は好きだ。
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