2009年3月22日
スペイン ジャズ/フュージョン フラメンコ ガットギター フィンガーピッキング
Marcos Teira は、ややフュージョン寄りなコンテンポラリー指向のフラメンコギタリスト。フラメンコというと、アンダルシアに代表されるスペイン南部が本場ということになっているが、彼は北西部のガリシアに古くから伝わるケルト音楽とフラメンコの融合を試みる、いっぷう変わった一派の旗頭であり、Marful というグループを率いて活躍している。ガリシアのフラメンコギタリストというと Xesus Pimentel を思い浮かべるが、実際、この二人は交流が深くてジョイントアルバムも出している。
MySpace の彼のページによると、影響を受けたアーティストに Paco de Lucia や Camaron らフラメンコ・ヒーローと並んで Jimi Hendrix や Eric Clapton、Charles Mingus らのロック/ジャズシーンの著名人がズラズラと続く。年端もいかぬ頃からギターをかかえて大人に混じってタブラオに出入りしてギターの腕を磨いて...というような、スペイン人フラメンコ弾きのイメージが微塵も無いのが面白い。スペイン人でありながらそのスタンスは、案外日本の沖仁あたりと近いのかもしれない。
ユニット Marful での活動がメインだった Marcos Teira が'01年に放ったソロアルバム。Marful のサウンドに比べると、「まっとうな」フラメンコに仕上がっているので、あれっ? てな感じだ。バックもエレクトリックベースとパーカッション、フルート等、これまた「普通の」フラメンコ・フュージョンっぽい。バックグラウンドをいったん脱ぎ捨てて一人のギタリストとしてメインストリームに勝負を挑んでみたかったのかな? とは勝手な想像。実際、彼の安定感あるギターテクニックに支えられた楽曲の数々は、目を見張るようなハデさこそ無いものの、しっとりと柔和な味わいがあり悪くない。特に「Nenos Na Praia」のような、ちょっとスノッブなポップさが詰まったようなナンバーは、根っこがフラメンコで出来たギタリストからは出てこない(演りたくても演れない?)サウンドだろう。そして、グラナーイナスの形式をとったラストナンバーの無伴奏ソロ「Punta De Cabío」では、真摯に伝統に向き合う Teira の姿がある。
フラメンコとして必須科目ではないが、その包容力を知ることが出来る一枚として、お勧めできるアルバムだ。
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